世界的に流行しているコンパクトSUVクラスにボルボが投入したXC60は、クーペスタイルの美しいデザインに見合った走りも提供。さらに得意とする安全技術でも新たな地平に到達した
ボルボXC(クロスカントリー)の新しい息吹を感じさせる存在がXC60。ご存じのように、歴代のXC70はV70の発展型で、XC90もボルボ・エステート伝統のボクシースタイルを継承するが、XC60のエクステリアははるかにスポーティでスタイリッシュな仕上がり。SUVと4ドアクーペの融合ともいえるコンセプトは、時代を一歩リードする。
では、その標的は?属するのはBMW・X3が開拓したプレミアムコンパクトSUV市場で、X3のほかメルセデスGLKやアウディQ5も競合車となる。XC70より215mm短く、110mmノッポなボディは、このクラスでは標準的なものだ。そのうえで235mm(XC70比+45mm)という特大の最低地上高を確保したパッケージは注目に値する。
FFベースのAWDメカは、第4世代ハルデックスカップリングを核とする電制トルクスプリット式。後輪駆動力が瞬時に立ち上がる優れた応答性が自慢で、急坂を安全に下ることができるHDC(ヒルディセントコントロール)も搭載するから、"XC"の名に恥じないオフロード性能を期待することができる。
なら、現代のSUVでオフ以上に重要度が高いオンロードの性能は?
ライバルやXC70に大きな差をつけるのは強力な心臓だ。日本仕様は、シリーズのなかでもっともパワフルな285馬力/40・8kgmの3L直6ターボを搭載する。印象的なのはぶ厚いトルクで、XC60はどんな場面でも力感あふれる走りを披露。回転のスムーズさや静粛性もレベルが高く、上質かつ快適な走りを約束する。
で、いざ右足にグッと力を込めれば……ターボならではの迫力ある加速感と、クラストップレベルの速さが炸裂。6000回転台半ばまでパワフルに、刺激的に吹けるだけでなく、常用域からターボが高い応答性を示す(ツインスクロール式のおかげ)ため、質の高いスポーティ走行を広範囲で楽しむことができるのだ。
そこで問われるのはシャシーの能力だが……。1.9トン超の車重(前軸荷重だけで1160kg)、大きなロードクリアランスから、正直言って大きな期待は抱いていなかったが、予想はいい意味で裏切られた。
そう、XC60は操縦安定性の調教もうまくいっている。高速道路では、追い越し車線をリードするペースでもドンと安定。素直な操舵応答や収まりのよさも光るところで、カーブが続くステージでもハイペースを保つことが可能だ。ロングツーリングにおける安心と快適の実力は高い。
そしてワインディング。T6SEは、ムダな姿勢変化を抑えるダイナミックシャシーセッティングと、235/60R18の高性能タイヤを採用。その効果もあって見事なフットワークを披露する。操舵初期の応答性は穏やかだが、そこからは思いどおりに曲がってくれるため、その気になれば攻めの走りを楽しむことだって可能で、車重の重さや重心の高さのネガは感じさせない。
ただし、日本の法規や、SUVユーザーの走行パターンを想定すると、サス設定はちょっと高速方向に寄りすぎかも。日常の快適を重視する人には、電制ダンパーを核とする「FOURーC」のオプション選択をお薦めする。また、チャイルドシートを内蔵した後席はクッションの感触が硬めのため、ファミリー・パッケージはその点を考慮して選択したい。
いずれにしても、XC60はボルボの気合いが感じられる実力派。クラストップレベルの性能、最先端の安全メカ、充実の装備を考えれば、600万円を切るプライスはとても魅力的に見えてくる。
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