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試乗レポート
VOLVO S80
VOLVO S80 ボルボS80
NEWCAR impression ■発表 2006・11
VOLVO S80
ボルボならではの哲学が貫かれた
「優しい」プレミアムサルーン
ボルボのフラッグシップサルーンであるS80が全面改良を受けて新登場
新型S80がアピールするのは、ハード面での大きな進歩に加え
その根底に流れるボルボ独自のフィロソフィーであった……
 ドイツ勢をはじめ欧州のプレミアムカーがこぞって存在感を誇示する流れの中にあって、ボルボの新型フラッグシップサルーン「S80」は控えめで優しいルックスでお目見えした。スタイリングのみならず、S80のフィロソフィーはあらゆる面において「人との関わり」、「人生」、「思いやり」=「優しさ」なのだという。考えてみればクルマに限らずプレミアム商品のほとんどは、今風に言う「モテ」度的なものがもてはやされ、それは当然ファミリー臭を排除する方向になるのだが、ボルボはカタログや広告に頻繁に家族が登場してくる。その戦略で成功しているプレミアムカーはボルボぐらいで、たいへんに独自性が高いのだ。スカンジナビア・デザインのセンスが活きているのはもちろん、「優しさ」というフィロソフィーがすべてにおいて徹底されているからこそ、成立しているのだろう。
 プラットフォームやパワートレーンなど多くが刷新されたS80はハード的にも注目だ。安全性への追求を何よりも優先するボルボはクラッシャブルゾーンを有効にとるため、エンジンを横置きにするのが常だがメイングレードの新開発3.2Lはなんと直6。それでもドライブシャフトを2軸構造にするという革新技術、補器類のレイアウト工夫などで、エンジン全長は従来の直5に比べてわずか3mmのプラスに収めている。
 走り出してみると、やはり直6。回転上昇感はスムーズで、引っ張り上げていくことに快感がある。ボルボのエンジンは超フラットトルクでこの上なく扱いやすい反面、面白味に欠けることもあったが、この直6は話が別。極低回転域でのトルクが薄く感じられることや、わずかなスナッチ感があることなど熟成の余地は残されているものの、操る歓びが加わったたことは大きなトピックだろう。
 一方のV8・4.4Lはけっこう勇ましいサウンドを響かせ、スポーティ感はさらに高い。さすがにトルクも分厚く、極低回転からスムーズに走れる点も3.2L以上で、プレミアム&スポーティの両立がなされているといえるだろう。ただし、どちらも過激さを感じさせるようなところは少なく、シフトクオリティも含めてあくまで「優しい」の姿勢は崩していない。
 シャシーも、スムーズな乗り味に進化をみることができる。とくにフロント周りは剛性感が上がっており、サスペンションの素直な動きや正確性が高まっている。特にFOURーCを装着しているV8モデルは、低速域でのコンフォート性からハイスピード・コーナリングでの踏ん張りまで、幅広いレンジで弱点を見せない。18インチタイヤであっても突き上げを感じさせないのは、やはり可変ショックアブソーバーの強みだろう。
 スタンダード・サスペンションの直6モデルも新プラットフォームの進化ぶりをみせ、概ね快適かつ安定感も高かったが、低速域でわずかに路面の細かな凹凸を拾う場合もあった。これはFOUR―Cの有無というより、装着タイヤの特性の差かもしれない。
 いずれにせよ、ハード的に大きな進歩が見られる新型S80。それも、プレミアムサルーンながら「優しい」という独自の価値観が貫かれた、ボルボらしいモデルだ。
(文●石井昌道 写真●内藤敬仁)
Detail Check
エクステリア
VOLVO S80 VOLVO S80 VOLVO S80 VOLVO S80
VOLVO S80 ●S80 3.2のタイヤサイズは225/50R17。それなりにエアボリュームがあって基本的にはコンフォート志向。V8は18インチ。
VOLVO S80 VOLVO S80 ●世界初採用のBLIS。ミラー下部にはセンサーがあり、死角内に車両が進入した場合には、ミラー内側(写真上)の警告灯が点灯、ドライバーに注意を促す。
インテリア
VOLVO S80 VOLVO S80 ●全長は4850mmと先代同様だがホイールベースは45mm延長された。縦置きエンジンFRのライバル勢に比べれば室内空間は有利だ。ベンチレーテッドシートは微細な通気孔レザー素材、内蔵ファン、シートヒーターで表面の温度・湿度を快適に保つ。また、WHIPS(後部衝撃吸収リクライニング機構付きフロントシート)も進化。
VOLVO S80 VOLVO S80 VOLVO S80 VOLVO S80
コックピット
VOLVO S80 ●贅沢な素材感や大胆な色遣いはラグジュアリーそのものだが、細部のあらゆるところまで形状や機能が入念にデザインされ、乗員に優しい。エレガントでありながらファンクショナルなフリーフローティング・センタースタックは、後方に向かって流れるように延長され、リヤシートの目前まで引っ張られる。
ラゲッジスペース
VOLVO S80 ●トランクルーム容積は480L。後席は40対60の分割可倒式で、センターアームレストにはスキーなどを積むためのスペシャル・スキーハッチが装備される。
エンジン
VOLVO S80 ●直列エンジンを横置きしてクラッシャブルゾーンを広くとるのは従来の手法だが、新開発ユニットは6気筒で登場。官能的な回転バランスをみせる。
Body Color
シルバーメタリック ■ブラックサファイア チタニウムグレーパール
マジックブルーパール オイスターグレーパール ディープブルー
※ほか3色あり(グレードによる)
LOOK AT IT
VOLVO S80 初採用のV8 4.4Lエンジンはスポーティなサウンドを奏でる
 XC90で初めて採用されたV8 4.4Lエンジンはバンク角60度と狭角。これも横置き搭載時に前後方向を短くでき、クラッシャブルゾーンを確保する思想から生まれたものだ。エキゾーストノートは、ボルボのイメージからすると大きめでスポーティ。3ドライビングモード選択式「FOUR-C」アクティブパフォーマンスシャシーは、V8モデルに標準装備、直6モデルにオプションとなる。
VOLVO S80
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