今や“いいクルマ”というだけではユーザーは満足しない。ハードウェアが優れているのは当たり前。走行性能に優れ、低燃費というだけでは、ライバルから一歩先を行くことは難しい時代だ。そこでボルボが注力したのが、安全性とデザインだった。その考え方が正しかったのは、XC60から始まった60シリーズとその後の40シリーズの成功を見ればあきらか。さらに言えば、内容に対してリーズナブルなプライスも人気に寄与しているのは間違いない。
輸入車マーケットにおけるミディアムセダンは人気のあるボリュームゾーン。そのエントリーモデルの価格は400万円半ばというのが相場だ。それに対してS60 T4は1.6L4気筒ターボを搭載し、価格はベーシックなT4で379万円。これは昨年モデルまでに比べて20万円ディスカウントされた価格となる。テスト車はその装備充実版であるT4 SEで、HDDナビや電動調整式シート、パドルシフトなどを装備する基幹グレード。こちらは409万円。
昨今安全装備の充実、とくに衝突軽減ブレーキの採用については各社積極的だが、ここで一日の長を見せるのがボルボのシステム。20万円のセーフティ・パッケージは、さらに進化を遂げている。もっとも大きな進化は、歩行者検知機能付追突回避・軽減フルーオートブレーキ(ヒューマン・セーフティ)が自転車も検知可能となったこと。さらに対向車を検知してヘッドライトの配光を可変させることで、つねにハイビーム状態を保つフル・アクティブ・ハイビームの採用も画期的だ。駐車場での後退時の死角をレーダーで監視するクロストラフィックアラートも、実社会での安全を考えるボルボならではのアイデアだと言えるだろう。
最後に試乗での印象を手短にまとめると、すっきりとしていて過不足を感じさせない、実直かつ軽快な乗り味であった。きっと長く愛用できるはずだ。
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