おしゃれなルックスと、気持ちいい走り味がウリのビートルにとって、オープンモデルは主役と言える存在。ザ・ビートルが、先代の「ニュー」よりもタイムラグを削ってカブリオレを市場投入したのは、「早くして」と願うファンが大勢いるからだ。
そんなザ・ビートル・カブリオレの第一印象は、期待どおりのもの。チョップトップ風に変わったそのスタイルとソフトトップのバランスは考え抜かれたもので、オープンはもちろん、幌をかけた姿もファッショナブルな仕上がり。シリーズで唯一の標準装備となるリヤスポイラーも、魅力を添えるアイテムとなる。
典型的なキャブフォワードパッケージで、天井も高かった先代と比べると、クローズド時のキャビンの開放感はスポイルされた印象だが、それは弱点ではなく魅力と捉えることもできる。オープンにしたときの「スコーン」とした頭上の抜け感や、解放感の高まりがより強調されるため、オープンの爽快感やありがたみがより体感しやすい。
ちなみに、ソフトトップは6層構造の入念なつくりで、耐候性、遮音性ともにハイレベル。当然のようにフルオート式で、オープンで9.5秒、クローズドで11秒と、素早い開閉操作を実現しているのも自慢だ。
なら、気になる走り味は? 驚いたのは、ボディ剛性の低下が不可避なオープンにもかかわらず、ベース車以上にしっとりと上質な乗り心地を実現していること。荒れた路面においても衝撃吸収はマイルドで、ハードな走りにおいても高度なロードホールディングを維持する。
その秘密は、ハッチバックのトーションビーム式からマルチリンク(4リンク)式に格上げされたリヤサスペンション。重めになった上屋と、穏やかな特性を持つ16インチタイヤのコンビネーションも乗り心地にプラスに作用し、カブリオレ独特の抜群に心地のいい走りのテイストを生み出しているというわけだ。
そうした表現をすると、快適一辺倒のゆる〜い走りをイメージするかもしれないが、じつは操縦安定性の実力だって高い。動きは穏やかだが、操舵に対する反応はリニアで、高速レーンチェンジや峠のS字コーナーにおいてもつながりのいい挙動を示すから、安心してペースを上げることができる。スポーティ走行も十分楽しめる能力を備えているのだ。
さらに、1.2L TSIの能力についても、改めて「やるじゃない」と感心させられた。ハッチバックより車重が100kgほども重くなっているのだが、発進・加速のもたつきはまるで気にならない。17・8kg mという1.8L並みのトルクを、低い回転域から発生しているところがカギで、数値から想像する以上のキビキビ感ある走りを提供してくれる。
高速走行のゆとりや静粛性も満足できるレベルで、Sレンジを使えば峠道を気持ちよく飛ばすことも可能なのだから、あなどれない実力の持ち主と言っていい。シフトの滑らかさや変速の的確さを含めて、1.2L TSI+7速DSGの完成度はさらにレベルアップした印象がある。
ちなみに、全幅1815mmと、意外なほどワイドなボディを持つザ・ビートルだが、先代「ニュー」と比べると車両感覚はつかみやすく、日常の扱いやすさが改善されているのも見逃せないところ。毎日を楽しくしてくれる、癒し系のおしゃれなクルマを探しているのなら、新型カブリオレは最有力の候補となる。
オープンでより明瞭になるほんわかと快適な走り味は、一度味わったらクセになるもので、多くの熱狂的ファンを生み出すことは間違いない。
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