EA113をベースに256馬力／33.7kgmの高性能を実現した2L TSIユニットや、6速DSGのミッションはゴルフRと共通。しかし、シロッコRの走りは、さらにキレが鋭く、一段とエキサイティングなものだ。その理由のひとつは、クーペならではの低全高パッケージ。重心の低さや目線の低さが、走りの安定感やスポーティなドライビング感覚を増幅させるポイントになっている。

　でも、さらに大きな違いは駆動方式。ゴルフRは電制4駆だが、こちらはシンプルなFFで、車重が120kgも軽く仕上がっている。発進時に4駆が有利に作用するため、0→100km／hのデータではゴルフRに0.3秒の遅れを取っているが、実際の感覚は逆。加速の力強さやキレ、スピードの伸び感において、上位にあるのはシロッコRだ。

　また、ハンドリングのキレと速さにおいても、上を行くのはシロッコR。軽さに加えて、低重心&ワイドトレッド、1サイズ太いタイヤも有利に働き、ゴルフR以上にシャープなコーナーワークを実現している。ステアリングから伝わる手ごたえ感もよりダイレクト。そう、シロッコRは超一流のコーナリングマシンに仕立てられているのだ。

　バランス重視なら、トラクション性能と限界域のコントロール性に優れたゴルフRがいい。しかし、刺激性が強いのはFF。操る楽しさを重視するなら、より鋭い牙を持つシロッコRが適任だ。進化型電制LSD（XDS）の効きは抜群で、FFでも強力なトルクをムダにする場面は少ないから、路面がドライならゴルフRより確実に速い。

　ちなみに、専用サス＋18インチの足が生む乗り心地は、ゴルフRよりハードめ。排気のこもり音も大きめだ。とはいえ、コンフォートモードでの乗り心地は「十分快適」の範囲に収まるから、日常のお供の役目もしっかりこなしてくれる。