 3.6L狭角V6が生む299馬力/ 35.7smの性能は、パサートCCのV6・4モーションと共通。しかし、右足に力を込めたときの印象はよりパワフルで、吹け上がりもさらに鋭い。そう、レーシングの頭文字「R」を車名とするR36らしく、心臓にも、DSGにも専用のチューンが施されているのだ。なんと、6800回転のリミットまで引っ張ると、「パンッ!」という炸裂音をエキゾーストから響かせてシフトアップ。またも強烈な加速を楽しませてくれるのだから、R36の加速はとびきり刺激的だ。
そして、コーナリングも、ブレーキングも鮮やか。1トンを超える前輪荷重をまるで意識させないほど回頭が鋭く、限界域まで弱アンダーを維持するのが光るところで、峠道を駆け抜けるスピードは高性能スポーツカーに迫るレベル。たとえ攻めの走りでも、ワゴンボディにつきもののリヤの重さや、剛性の貧弱さはまるで感じさせないのだから、VWが本気でヴァリアントR36を開発したことがわかる。
というと、とんがったチューニングカーのようなクルマをイメージするかも。でも、3.6LV6とDSGのコンビは、低速域でも十分スムーズな走りをもたらし、自動変速のマナーも良好。加えて、専用スポーツサスに18インチ40タイヤを履かせた足は、アダプティブシャシーコントロールDCCを「コンフォート」に設定しておけば、低速域でも十分快適な乗り心地を提供してくれるのだからうれしい。
つまり、ヴァリアントR36は、日常走行の扱いやすさや、家族や仲間とのドライブでの快適性も犠牲にはしていないのだ。それでいて、本気になったときの能力は最高速250q/h、O→100q/h5.8秒と「スーパー級」なのだから、まさに一粒で二度はおいしい。「走りの情熱は永遠」という大人が泣いて喜ぶに違いない、高次元バランスのスポーツワゴンだ。ハデすぎないルックスも通好みと言える。
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