ゴルフのモデルチェンジは、いつの時代もクルマ界に大きな衝撃をもたらすもの。とくに、VWが「MQB」と呼ぶ、開発と生産における大胆なモジュラーコンセプトを採用した7代目「ゴルフZ」の登場は、特大の話題を提供することになった。その完成度は驚くほどで、Cセグメントに止まらず、クルマ全体の評価基準をひとつ上のレベルに引き上げたといっても過言ではない。
でも、VWは進撃の手をまだ緩めない。わずか半年のタイムラグで、ワゴンのヴァリアントを日本市場に送り込んできたのが、その証拠だ。
ゴルフVの時代に加わったワゴンモデルは、ずっとCセグ・ワゴンのベンチマークとして君臨してきただけに、クルマづくりは手慣れたもの。リヤオーバーハングを延長することで、Dセグ・ワゴンにも負けない荷室スペースを確保しながら、スタイルもバランスよくまとめている。
ハッチバック(GTIを除く)と同様に心臓は2タイプで、コンフォートラインには105馬力/17.8kgmの1.2L TSI、ハイラインには140馬力/25.5kgmの1.4L TSIを積む。いうまでもなく「ブルーモーション」で、全車にスタート/ストップ機構とブレーキエネルギー回生システムを搭載する。
気になる価格は、コンフォートラインが269万5000円、ハイラインが322万5000円。プリクラッシュブレーキシステムや9エアバッグなどの充実した安全装備はコンフォートラインにも標準なだけに、大いに迷う選択となりそうだ。
多くの人が気にする動力性能に関しては、1.2L TSIでも十分に合格点をつけられる。ハッチバック比で車重は60kgほど増加しているが、発進・加速の印象は意外なほどキビキビ。1.8L並みのトルクと、エンジンを回し気味に走ってもノイズレベルが大きく高まらない特性がカギで、十分な満足度をもたらす。
でも、積載時の力強い加速感や、高速クルーズでの余力といった、ゆとりを求めるなら1.4L TSIがお薦めとなる。どんな場面でも頼もしい走りを提供するだけでなく、エンジン回転を低く保てるから静粛性の面でも明らかに有利。ヴァリアントに最適な心臓と言えるだろう。
なら、シャシー性能はどうか?ハッチバックと同様に、リヤサスは1.2Lモデルがトーションビーム式、1.4Lモデルがマルチリンク式だが、どちらも高いトータルバランスを備えている。タイヤが16インチということもあり、コンフォートラインのハンドリングは穏やかなしつけ。だが、高速走行では欧州車らしい高度な安心感をもたらし、峠道でスポーティなドライビングを楽しむだけの潜在能力も持つのだから、「さすがゴルフ」と感心してしまう。
対するハイラインは、17インチタイヤを履くこともあって、よりしっかり感が際立つ走りの味つけ。コーナリング限界やハンドリングの正確性は、スポーティワゴンと位置づけられるほどのレベルにある。電制デフのXDSが、「曲がる」能力を高めていることがより実感しやすいのも、ハイラインだと言っていい。
また、リヤ荷重の変化が大きいワゴンの場合、空荷の乗り心地も気がかりな点だ。新型ヴァリアントは、両モデルともリヤサスの硬さは意識させず、良質な乗り心地を提供してくれるから安心していい。
そして全体の印象。ハッチバックと比べて挙動がマイルドで、ゆったりした乗り味が楽しめるヴァリアントは、家族でドライブを楽しむのにぴったりのモデル。新型も、多くのファンに支持されるのは間違いない。
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