予定どおりと言ってしまえばそれまでだが、新型ゴルフにもGTIがラインアップされた。発売開始は9月25日で、すでにその前からの受注を含め800台のオファーがあったというのだから驚きだ。ゴルフのスペシャルスポーティモデルといえるGTIだが、街で多く見かける日は近いだろう。笑顔で誇らしげなユーザーの顔が目に浮かぶ。
さて、新型の中身だが、そこもまた予定どおりである。エンジンは既存の2Lユニットをスープアップしたもので、シリンダーヘッドのみ手を入れた。昨年のパリモーターショーでコンセプトカーを、今年のジュネーブショーで市販車を発表してきたものとほぼ同じ内容だ。
逆に言うとそれはすごいことである。予想どおりのことが行われながら、これだけの注目を集めるからだ。つまり、それだけ多くの人が待ち望んでいたクルマということになる。
その2L直4ターボは、220馬力を発揮する。従来型が211馬力だから進化の跡は見える。トルクも35.7kgmとなり、こちらは7.1kgmの向上となった。燃費もそもそも高効率のTSIユニットに6速DSGを組み合わせ、さらにアイドリングストップ機構や回生ブレーキをつなげたのだからすごい。JC08モードは15.9km/L。従来型が10.15モードで13km/Lだったことを考えても効果は大きい。
こいつの真骨頂は走りにつきる。インポーターもそれをわかっていて、メディア向け試乗会は富士スピードウェイのショートサーキットを使って行われた。よって、このページのメインカットはこうなる。なかなかの迫力だ。その意味からも、ハンドリングを堪能するのが今回のメインテーマであることは間違いない。
そのハンドリングだが、走り出した1周目からスタンダードとはちょっと違う気がした。ステアリングのギヤ比が高くクイックさが増している。あとで聞くとプログレッシブステアリングというシステムが付いていた。切り角が大きくなるとギア比が高くなるようにし、スポーツ性を高めるものだ。そのためロックトゥロックも異なる。
なので、タイトコーナーではそれほど大きく切る必要がなく、はじめは切りすぎてしまった。だが、それも慣れると扱いやすさを感じる。こいつはこのクルマに見合った装備だ。
それじゃどこまでもスポーティかと言えばそうともかぎらない。4リンクを使ったリヤサスは乗り心地がいい。フロントの荷重を抜いてリヤサスに荷重をスライドさせても、ビクともせずフラットライドに持ち込もうとする。粘り腰でありながらの快適性はさすがといいたい。
もちろん、そこには電子デバイスがしっかり介入する。ESPのなかに含まれるXDSプラスがどんな状態でも姿勢を立て直そうとする。アンダーステアを消して、よりニュートラルにするこういったシステムで、運転が何倍もうまくなった気になるだろう。意図的にとんでもないことをしなければ、デバイスを上まわって破綻させることは難しく思えた。
パワートレーンに関してはエンジンレスポンスなどに不満はない。DSGも反応がいい分、パドルを使わなくともそれなりに速く走れる。というか、全体的なトルクバンドの広さとクロスレシオのギヤ比がオートマモードをじつに扱いやすいものにしている。アクセルとブレーキの反応でアップとダウンを繰り返すシフトに大満足だ。それにしても新型は不満箇所を見つけるのが難しいとさえ思えた。あくまでもゴルフらしく真剣に走る楽しみを追求している。
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