凛々しくなったスタイル、より上質になったインテリアを見ただけでもゴルフの進化は明らかだが、さらに衝撃的だったのは……走りの質感アップだった。そうした印象は、上級のハイラインで一段と鮮明になる。
ついに上陸を果たしたゴルフZには3つのグレードが用意され、トレンドラインとコンフォートラインは105馬力/17.8kgmの1.2L TSI、ハイラインは140馬力/25.5kgmの1.4L TSIというエンジン構成になっている。1.2LはDOHC4バルブ化、1.4Lはアルミブロック化と、どちらも大きな進化を実現した新世代ユニットだ。
肝心の動的パフォーマンスは1.2L TSIでも不満のないレベルにあるが、1.4L TSIの走りは全域でのゆとりを実感させるもので、静粛性に代表される快適度もひとつ上のレベルにある。しかも、1.4L版にはACT(アクティブシリンダーマネージメント)が搭載され、その完成度は「いつ2気筒になったの?」、「あれ、いつの間にか4気筒に戻っている」……と、表示を見ないと切り替えがわからないほどスムーズなのだから、エコ指向派やメカ好きでなくても大いに興味をそそられる。
でも、ハイラインの違いはそれだけではない。ゴルフZでは、1.2Lはトーションビーム式、1.4Lはマルチリンク式と、リヤサスにグレード差をつけた点を見逃してはいけない。
16インチタイヤを履くコンフォートラインは、ウエットコーナリングでやや頼りない挙動をみせ、荒れた路面ではコツコツ、ヒョコヒョコと落ち着きのない上下動を伝えることがあったが、DCC(電制可変ダンパー)をオプション装着したハイライン(タイヤは17インチ)の走り味は、あらゆる面で「ひとクラス上」を意識させる仕上がりだった。
「コンフォート」モードは、乗り心地のしなやかさや抑制されたロードノイズが印象的で、Eセグメントのサルーンに迫る快適性と安心感を提供する。極上の乗り味は、「ゴルフもここまで来たか!」の感動をもたらすほどのものだ。しかも、「ノーマル」…「スポーツ」と切り替えると、サスと操舵感は適度に締まったフィールとなり、スポーティなドライビングにも対応するから懐は深い。
なら、ベストな選択は?プリクラッシュブレーキ標準で249万円と、トレンドラインの設定はとても魅力的だが、アダプティブクルーズコントロールやリヤビューカメラ、16インチタイヤの標準化を考えれば……269万円のコンフォートラインの買い得感はより高く思える。
で、299万円までラインを上げれば、ワンランク上質な走りとより充実した装備を持つハイラインに手が届き、14万7000円をプラスすればDCCパッケージの選択が可能なのだから、今度のゴルフはグレード選びで大いに悩みそう。
いずれにしても、VWの新世代モジュール戦略「MQB」のもとで開発された7代目ゴルフは、ファンの期待を超えるほどの高い実力の持ち主であることは間違いない。個人的には、1.2L TSI車のリヤサスを格下げした点に疑問を持つが、そこにはVWなりのバリューフォーマネーの思想が込められているのだろう。
Cセグメントのハッチバック市場は、長年にわたってゴルフが牽引してきたマーケットだが、今後数年はまた、このゴルフZがベンチマークとなるのは間違いない。まさに「真打ち登場!」という感じ。とくに、ハイラインのデキは感動のレベルにあり、ゴルフファンだけではなく、今も増加傾向のダウンサイザーの興味も大いに引きつける予感がする。
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