いつの時代もベーシックカーのベンチマークとして世界中から注目されてきたVWゴルフが6年ぶりにフルモデルチェンジを受けて登場。すべての面でレベルアップしたという、その実力をチェック!
ワッペングリルの「X」から、鬼才ワルター・デ・シルヴァが手腕を振るったクリーンな新世代スタイルを持つ「Y」へと移行したゴルフ。約5年のインターバルは、歴代モデルでいちばん短い世代交代の例だ。加えて、2575mmのホイールベースや、ゴルフXの後期型で導入&拡大展開をしたTSI+DSGのパワートレーンも踏襲されている。
そこから想像できるように、今回のモデルチェンジは、基本となるプラットフォームやメカを引き継いだ熟成型の進化だ。でも、単なるスキンチェンジではなく、本質の部分にもしっかりと改良を施している。
開発陣がとくに注力したのはクオリティの向上。ボディプレスの精度を高め、よりしっとりした質感のインテリアを実現しただけでなく、走りの質感アップにもこだわった。
乗ってすぐに「Xとは違う」と感じるのは、快適度や上質感をスポイルする騒音や振動が劇的なレベルで小さくなったこと。エンジン音、ロードノイズの遮断は間違いなくクラストップレベルで、加えて車外からの音の侵入も小さく抑えている。
ここで大きな効果を発揮するのは、遮音材を挟む3層構造としたフロントウインドウや、2重リップ構造を新採用したウインドウガラスのシール、ホイールハウス内に追加した新たな遮音材など。Cセグメントのレベルを超えた入念なつくりを施す。
それでいて、旧コンフォートラインと新ハイラインを比べると、車重が50kgも軽くなったのだから驚き。30mm拡幅された全幅、運転席ニーを加えて9つになったエアバッグを考慮すれば、設計の巧みさがより光る。じつは、X時代より生産面の合理化も進んだというから、世代交代の意味は隠れたところにも潜んでいそう。
とはいえ、内外装の質感、走りの質感、環境性能(10・15モード燃費は16・2〜16・8km/Lに向上)のすべてを引き上げての登場だから、この合理化に意義を唱える点はない。
では、コンフォートラインとハイラインの乗り味の違いは?まずはシャシーに注目する。低転がり抵抗の205/55R16タイヤを履くコンフォートラインに対して、スポーティな特性の225/45R17タイヤを履くハイラインは、全体にフットワークのしっかり感が強調されている。
ダイレクトな操舵感や、正確なハンドリングを好む人には17インチ、穏やかで素直なハンドリングを好む人には16インチがおあつらえ向きと言える。荒れた路面でのタイヤのバタつきやロードノイズがわずかに大きくなる程度で、乗り心地に関しても17インチにはネガな点は少ないから、スポーティな走り味を指向する人には17インチをお薦めする。
サスを固めてとんがった性能やスポーティさを追求するのではなく、素直なサスストロークが生む高い路面追従性を生かして、わかりやすく、コントロールしやすい弱アンダーステア特性にまとめているのが新型ゴルフ。ビギナーでも安心して、スポーティな走りが楽しめるはずだ。
お次は心臓。122馬力のシングルチャージャー+7速DSGの完成度は新型でより高度になり、コンフォートラインはどんな場面でもまったく不満のない性能を提供してくれる。中高回転まで回しても荒っぽい印象にはならないから、その気になれば思いっきりアクセルを踏んで爽快な走りを楽しむことも可能だ。
で、そこに、ひとつ上のレベルのゆとり、スポーティさ、快適性を加えたのが160馬力のツインチャージャーを積むハイライン。2.4Lクラスと肩を並べる、力強く、上質な走行フィーリングを味わわせてくれる。
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