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VOLKSWAGEN EOS |
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■発表 2006・8 |
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高度なドライビングパフォーマンスと
非日常的な開放感の素晴らしき融合 |
ギリシャ神話に登場する「EOS」=「暁の女神」をネーミングの由来としたイオスは
ゴルフとパサートの中間に位置する上級カブリオレ(&クーペ)
その完成度は、我々の期待を大きく上まわっていた |
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今をときめく格納式ハードトップの流行はメルセデスSLKから。そのあと、Cセグメントでもプジョー307CC、ルノー・メガーヌグラスルーフカブリオレというフォロワーが現れた。つまり、イオスはクラス別でも3番手。フツーなら「VWよ、おまえもか」ですまされてしまうところだ。
ところが欧州でも日本でも、イオスは特大の関心を集めている。要因はズバリ、凝りに凝ったルーフメカにある。メガーヌはガラスルーフという新たな魅力を提案したが、イオスはそこにスライド開閉&チルト機構までをプラスしてしまった! つまり、雨の日でも、身震いする厳冬期でも、非日常的な開放感を提供してくれるわけ。
しかも、ルーフ開閉の動作は至って滑らかで、複雑なアクションを考えればタイムも早い。後発にはなんらかのサプライズが必要だが、正直言ってここまでくると、VWの執念さえ感じてしまう。
加えて、走りの完成度も高い。そこで見逃せないのは、従来のゴルフカブリオレとは手法を変え、専用ボディを持つカブリオレ・クーペとして設計したこと。高剛性を確保したボディが、確かな走り、高い快適性のカギを握っている。オープンカーにありがちなボディのねじれ感やブルブル振動は軽微。クローズド状態で走っていると、本来がカブリオレであることをつい忘れてしまいそうだ。
だから、パワフルな心臓を存分に生かした高速走行やスポーティ走行も得意。たとえば2.0Tは……ゴルフGTIと比べるとさすがに加速や身のこなしの軽快感、ハンドリングの正確性、ブレーキの効きに違いを感じるが、対象をジェッタ2.0Tに代えればスポーティ感は遜色のないレベル。スポーツクーペとしても通用する高度なパフォーマンスを発揮する。
となれば、50馬力/4kgm高のエクストラを持つV6の走りはさらに痛快! 豪快と表現してもいい加速感と、ゆとりと快適に満ちたクルージングを楽しむことができる。R32やパサートV6とは異なり、駆動方式は4モーションでなくFFだが、エンジンが勝ちすぎている印象がないのがいいところ。ワインディングのスポーツ走行などではじゃじゃ馬の片鱗を見せる場面もあるが、そんなときには挙動安定化メカのESPが適切に介入。ドライバーのやる気を殺がないカタチで、安定性と安心感をきちんと担保してくれるのだ。
しかも、2.0T、V6ともミッションはVW自慢のDSG。パフォーマンスや走りの洗練度の面ではCセグメントのライバルは敵ではなく、上級のメルセデスCLK、BMW3シリーズ、アウディA4のカブリオレを射程圏内に置く。それを考えれば、V6でも500万円を切る価格は価値がある。
なら、2.0TとV6はどちらが魅力的か? V6には性能、装備面での明確な優位性があるが……性能的に見れば2.0Tでもまったく不満はない。フットワークの軽快感は当然V6より上で、爽快な走りを日常的に楽しむことができる。また、荒れた路面でタイヤの硬さを伝える18インチに対して、17インチはよりマナーがよく乗り心地が全般的に快適。ボクが考えるイオスのベストバイは、標準の17インチタイヤを履く2.0Tだ。 |
文●森野恭行 写真●内藤敬仁 |
●ジェッタと比べると全長が155mm短く、全高が15mm低い。さらにリヤトレッドは50mmもワイド(パサート並み)で、安定したプロポーションを形成する。こだわりのポイントは、4座の格納式ハードトップモデルとしては低めで、スッキリとしたトランク部の形状。独創の5分割構造がそれを可能にした。ちなみにクーペ状態のCd値は0.315。空力も優秀。 |
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●大型ガラススライディングルーフを内蔵したモジュールA、中間に位置するモジュールB、リヤウインドーを含むモジュールCと、左右ルーフサイドメンバーで構成される5分割構造を採用。曲面を上手に重ねあわせるようにして、コンパクトな収納を実現した。システムは緻密で信頼性の高い電動油圧式。わずか25秒ほどで複雑な開閉操作を完了させる。 |
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●電動調整のレザースポーツシートを全車に採用。ブラックのシートにはブラック内装、ベージュのシートにはブラック/ベージュ内装を組み合わせる。ディープレッドのシートはオプションのナッパレザー仕様で、内装色はブラックとなる。キャビンはフル4シーターの実力を持ち、クーペ状態でも身長180cmクラスの人が前後に座ることが可能。クーペ状態で380(356)L、カブリオレ状態で205(183)Lとトランク容量(カッコ内はV6)も十分なもので、センタートランクスルー機構も装備。つまりファーストカーとしても通用する実用性を備える。 |
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●基本デザインはゴルフ/ジェッタに準ずるが、ドアトリムやエアコン吹き出し口の形状を変え、メッキ加飾を多用することでプレミアム感やスポーティ感を高めた。インパネやドアトリムに装着されるパネルは、2.0Tがブラッシュドアルミ、V6がポプラウッド。異なるテイストを持つ。 |
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●200馬力/28.6kgmを発揮する2L直4直噴ターボの“2.0T”はゴルフGTI、250馬力/32.6kgmを発揮する狭角3.2Lの“V6”はゴルフR32で定評の心臓。組み合わせられるのは2つのクラッチを持つロボタイズドMTのDSGで、Dレンジでの快適走行から、パドルを駆使してのスポーティ走行までをカバー。 |
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□キャンディホワイト ■パプリカレッド ■サモアレッドパールエフェクト
■ポーラーシーブルーメタリック ■ディープブラックパールエフェクト ■シルバーエッセンスメタリック |
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工場レベルからの徹底した品質追求が可能にした高精度
イオスの故郷はシャランなどを生産するVWポルトガル工場。生産の立ち上げに対応して、その真横にルーフモジュールの供給サプライヤーであるヴェバストの工場が新設された。理由は……ボディとルーフの高精度はもちろんのこと、両者のかみ合わせにも最高レベルの精度が要求されるから。さらに開発の際には、イオスのためにつくられた専用テストコースでの過酷かつ緻密な耐久テストが繰り返されたという。世界初のスライディングルーフ付き5分割式格納ハードトップを具現化するため、VWは惜しみない労力を注いだ。 |
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