 14年ぶりにモデルチェンジしたルノー・トゥインゴは、プラットフォームは旧型ルーテシアがベース。1.2Lエンジンとクイックシフト5と呼ばれる2ペダル5速MTは先代最終型と基本的に同じだ。しかもデザインはディーゼルエンジン搭載と右ハンドルを実現するためにノーズがポッコリふくらみ、かつての愛車でもあった旧型のスマイルは消えてしまった。
ということで、試乗会の舞台になった横浜の道を、とくに期待もせずにスタートした。この地で試乗するときのお決まりコースを走って帰ってこようと。ところが数分後、早くもその約束を破り、走りたい道を選びながら、できるだけ長くこのクルマと付き合っていたいと思っている自分がいた。
まずは乗り心地がいい。けっしてフンワリしているわけじゃないが、路面からのショックは巧みにいなし、それ以外は可能なかぎりフラット感をキープする。はるかに大きなクルマに乗っているような落ち着きだ。シートも腰を下ろした瞬間はペタッと厚みを感じなかったのに、そのまま1時間以上走り続けてもなんともないどころか、もっと座っていてもいいと思える。スタート直後はなんとも感じなかったのに、気がつくと快適性の高さに気づき驚く。そういう意味で典型的なルノーのよさを持っていたのだ。
気をよくしてペースを上げると、近年のルノーでベスト3入り確実といわれている旧型ルーテシアのプラットフォームがベースであることを、シュアなハンドリングとして教えてくれる。
低速では軽めの電動パワーステアリングは30km/hになればしっとりした感触を伝え、コーナーではまるで10年前から乗り続けているクルマみたいにドライバーに絶大な安心感を抱かせたまま、粘りのロードホールディングでハイペースを許してくれる。曲がりは不得意だった旧型とは大違い。65扁平のコンチネンタル・エココンタクト3でここまで走るとは、と思わせてくれるほどのポテンシャルなのだ。
もっとも1.2Lエンジンは75馬力にすぎないから、このシャシーの能力を味わいつくすほどの加速は持ち合わせていない。でも小排気量らしい軽快な吹け上がり、回せば回すほど力が出てくる性格に誘われるように、ちょっと遠めのシフトレバーを前後に動かして速さを引き出していると、スペックのことなど忘れてしまう。
かつてのフレンチコンパクトがそうだったように、かぎられたパワーやトルクを有効に活用すべく、頭と体を総動員して速さを紡ぎ出していく。ちょっとなつかしいドライビングスタイルが、ドライバーとトゥインゴの距離をどんどん近づけてくれるのだ。
それに車重がいまどきめずらしく1トンを切っているから、平坦地では75馬力でも全然不満なし。クイックシフト5をオートモードに入れたままでも元気に加速していけるし、シフトアップの減速感は気にならないまでに抑え込まれていた。
しかも新型は欧州モードでCO2排出量140g/km以下、生産工場がISO14001適合、リサイクル率95%以上のクルマに与えられるルノーeco2マークつき。走って楽しく、地球にやさしく、価格は200万円以下とおサイフにもやさしい。自慢のユーティリティもそのまま。さしたる期待をしていなかった元オーナーに、トゥインゴはトゥインゴのままであることを教えてくれたのだった。
|