4ドアラグジュアリーモデルの選択肢に、スポーツカーブランドの雄であるポルシェが加わったのはじつに意味深いこと。とんでもなく速い高級セダンが数多く存在するのが今の時代だが、ポルシェは異なる輝きを放つ。コクピットに体を収めた瞬間から、氏素性の違いは明らか。着座位置が低く、囲まれ感が強いコクピットは、パナメーラのわかりやすい個性で、立ち位置がライバルよりもスポーツカー方向に寄っていることがわかる。
なら、走りの能力は?大柄なボディに似合わない小まわり性を発揮するなど、日常の使い勝手も考慮して開発されたパナメーラは、「ポルシェ」の名から連想するよりずっとフレンドリーな性格を持つ。PDKの変速マナーは十分洗練されていて、電制エアサスをノーマルに設定しておけば乗り心地もとても快適。さらにはアイドリングストップ機構までを標準装備するのだから、時代にマッチした高性能サルーンだと言うことができる。
だが、真価を見せるのはSPORTスイッチをオンにしたとき。4.8L V8とPDKの制御が明確にパワフル&レスポンシブの方向にシフトし、シャシーがビシッと引き締められることで、パナメーラSはサルーンからスポーツカーへと変身する。最高速283km/h、0→100km/h加速5.4秒の数値を示せば、実力のほどがわかるだろう。
もちろん直線番長ではなく、ハードなコーナリングやブレーキングが本当の見せ場。「さすがポルシェ!」と感動する走りを披露する。素直でキレのいい身のこなしがSの個性だが、超高速時や制動時の安定性も優秀だから、定番の4Sでなく、後輪駆動のSを選ぶのもおもしろい。ちなみに2011年モデルでは、300馬力の3.6L V6DFIを新搭載。価格レンジがグッと下がることで、パナメーラの注目度がますます高まるのは間違いない。
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