2011年モデルのケイマンで話題を集めるのはやはり、専用チューンの3.4Lを積む新作のケイマンRだろう。でも、頂点のモデルはもちろん、素のモデルも美味なのがポルシェのいいところ。そうしたよき伝統を、2.9L DFI(直噴)ユニットと6速MTを組み合わせたケイマンのステアリングを握り、改めて確認することができた。
まず魅せられたのはフットワークだ。ミッドシップ+クローズドボディのケイマンは、生まれながらにしてハンドリングバランスの優れたモデルだが、最新ケイマンは動きの軽快感とハンドリングの正確性に磨きがかかった感じ。タイトコーナーも、高速コーナーも、スッと切り込む操舵も、ズバッと攻め込む操舵もすべて反応は思いどおりで、コーナリングは快感に満ちあふれている。
試乗車はオプション設定の18インチタイヤとPASM(電制可変ダンパー)を装着していたが、身のこなしの軽やかさは同じ組み合わせのケイマンS以上。つまり、おいしさの質が異なるわけだ。
それは心臓にもあてはまり、2.9Lには3.4Lとは異なる魅力がある。軽やかな吹け上がり感と、軽快なサウンドが2.9Lの快感の肝で、アクセルを踏み込むたびに爽快な気分にさせてくれる。また、速さも公道で楽しむのにちょうどいいレベル。3.4Lを全開にするには気合いが必要で、かといって08年モデルまでの2.7Lではやや食い足りないところがあったが、2.9Lは「ポルシェらしい速さ」を気負わずに楽しむことができるのがいい。
もうひとつアピールしておきたいのは、MTでポルシェを操る醍醐味だ。時代の流れはPDKだが、「操っている」、「自分のモノにした」という実感が濃いのはやはりMT。素のケイマンとMTの組み合わせは、完熟の域に達したケイマンのなかでも、間違いなく「最良コンビ」のひとつと言える。
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