 ハッチバックまたはセダンとブレーク(ワゴン)のボディ構成を、プジョーは長らく基本としてきた。だが、"7の世代"でブレークを、より多用途性に富むSWへと発展させ新機軸を打ち出した。トップバッターは307SW。3列シート7人乗りのキャビンとパノラミックガラスルーフが生み出す便利さ、心地よさが支持され、日本でもクリーンヒットを記録したのはご存じのとおり。
そうした成功作の跡継ぎなのだから、ハッチバックからわずかのタイムラグで上陸した308のSWには、おのずと大きな注目が集まる。
獲物を睨みつけるライオンをイメージさせる精悍な顔は共通だが、全長は225mm、ホイールベースは100mmハッチバックより長く、逆スラントDピラーと3次曲面ガラスでまとめたリヤスタイルも一段と個性的。そこで307SWともサイズを比べれば、全長は95mm、全幅は60mmも拡大されている。「立派になった」、「存在感はひとクラス上に匹敵」……と感じることだろう。
そんな308SWが積むパワーユニットは、ハッチバックのプレミアムやシエロで好評の140馬力仕様の1.6L直噴ターボとAL4のコンビだ。307SW(2L)より130kg増えた車重、1.6Lの排気量、いまだ4速のATに不安を抱くファンもいるだろうが、心配にはおよばない。
カギを握るのは、24・5kgmを1400〜3500回転の広範囲で発生するトルクフルなエンジン特性と、直噴+ツインスクロールターボがもたらす全域ハイレスポンス。グイグイ速度をのせていくような力強い加速を、常用域はもちろん、高速域や登坂シーンでも発揮する。パーシャル加速でこもり音を発生する場面もあるが、クルージングの静粛性は優秀で、快適性の面にも307SWからの大きな進化を実感できる。
ギヤ比が離れているため、キックダウンをさせると印象がとたんに荒っぽくなるが、それをカバーするのが太いトルクと鋭い応答性。スロットルペダルを大きく踏み込む場面は少なく、直噴1.6LターボとAL4の相性がいいことがわかる。減速時の自動ダウンシフトによるつんのめり感も着実に改善されているから、トータルバランスは十分良好だ。
だが、シャシー性能に関しては、少し気になるところもある。まずはフランス車に期待する乗り心地。17インチを履くグリフだけでなく、16インチ55タイヤのプレミアムでも、大きなくぼみや段差に遭遇すると直接的な上下動を伝えてくる。また、ステアリングのキックバックも小さくはない。高速時の乗り心地はフラットかつ快適で、日常の速度域でも少し路面が荒れている程度の条件では上質な乗り心地を提供してくれるだけに、「あと一歩」の感がある。
で、もう2つ注文を付けるとすれば、ブレーキペダルの剛性感と、中立付近で不自然な手ごたえ感を示すことがある電動油圧式のパワステ。これまでに経験した308の中でも、フィールがまずまずのモデルも存在したから、原因はそう深刻ではないかも。モデルが進化・熟成する過程で、改善されることを望みたい。
安定感が十分に伝わる高速スタビリティ、タイヤが悲鳴をあげるほど攻め込んでも挙動を乱さないコーナリング性能など、308SWには優れたポイントも多い。ハッチバックと比べればやはり軽快感やスポーティさが削がれた印象だが、家族の足と考えれば高い安定性や落ち着いた動きはむしろ歓迎すべき性格だろう。インパクトの強いスタイルを含めて、308SWがライバルにはない才能を有することは確かだ。
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