まるで獲物に襲いかかろうとしているライオンのよう!?308の顔つきは、07年に話題を呼んだ207以上に攻撃的だ。さらにはサイドのキャラクターライン、側方にまわり込むテールゲートの造形も印象的で、数あるCセグメントモデルのなかでも一、二を争うほど308はキャラが立っている。
それもそのはず、307からの世代交代で変革の柱とされたのは、デザイン、クオリティ、テクノロジーの3点なのだ。インテリアの素材、造り込みのレベルもクラスをリードするもので、全身からプレミアムコンパクトのムードを漂わせる。では、もうひとつの柱であるテクノロジーの実力は?
2Lが設定から落とされ、1.6Lのみの構成で登場したことに、まず驚きを隠せないファンもいることだろう。でも、308が積む1.6Lは従来のTU5JP4とは別物。「207GTが搭載する新世代1.6Lターボとベースは同じ」と言えば、「そうか!」と納得するに違いない。4速ATを組み合わせるプレミアム&シエロ用の性能は、従来型2L(EW10J4)にパワーで並び、トルクで4.1smの大差をつける140馬力/24・5smと申し分のないものだ。
とはいえ「下のトルクが貧弱」、「ターボラグがある」と、いまだターボにネガなイメージを持つ人もいるはず。ズバリ、それを解決するのが直噴+ツインスクロールターボの技術なのだ。最大トルクを1400〜3500回転で発生する特性からわかるように、EP6DTユニットはボトムから2.4L並みの豊かなトルクを発揮。実用域の応答性やねばりも良好だ。
加えて、右足に力を込めればグイグイと加速。5000回転台の半ばまでスムーズな回転フィール、高度な静粛性を保つのだから、走りの力感、ゆとり、快適性のすべての面で、307の2Lを大幅に凌ぐ実力を備える。07年エンジン・オブ・ザ・イヤー部門賞を獲得した実績は伊達ではない!
そして、PSA(プジョー・シトロエン)とルノーが共同開発した4速AT、AL4にも進化・熟成を感じ取ることができる。「エンジンを共用するMINIの6速ATが欲しい」が本音だが、減速時のダウンシフトが上手になったのはたしか。つんのめるような変速ショックはもはや感じられないから、これはこれでよしとしよう。
さらに、シャシー性能も大きく進化。プラットフォーム、サス、電動油圧式パワステなどのメカは基本的に先代のキャリーオーバーだが、技術の熟成を実感することができる。その典型は乗り心地。マイチェンでの改良後も307のサスはつっぱり感が残っていたが、308の足は素直にストロークするように変化。ロードノイズが大幅に低減された点を含めて、快適性はワンランク以上向上している。かつてのしなやかな足とは趣が異なるが……「伝統の猫足が戻ってきた」と表現していいだろう。
そうしたシャシーの熟成は、当然、操縦安定性にも貢献。自然なロール感、高い接地性がポイントで、リニアかつファンなハンドリングとしっかり感を伝える高速スタビリティを両立させることに成功。60oの全幅拡大は扱いやすさの面では気になるが、走りと快適のバランスにおいて、ワイドトレッド化がいい方向に作用したのは確実。ステアリング系の微振動が抑えられれば、走りの質感はさらにひとつ上のレベルに到達する。
いずれにしても、3"のシリーズ名を継承する第8世代のプジョーは、走りに関してもプレミアム感が味わえるコンパクトへと成長。今後、激戦のCセグメントをかき回す存在になるに違いない。