1007、4007に続き、4桁の車名を持つプジョーが3008。308をベースにSUVライクな外観とMPVの実用性が与えられたこのニューモデルの実力は最先端のクロスオーバーの魅力を堪能できるものだ
猫も杓子もクロスオーバー。それが、ここ10年ほどのクルマ界を象徴する動向といえる。だが、過熱気味の米、日、独などと、フランス勢の間にはかなりの温度差があったのも事実。理由のひとつは、最大のクロスオーバー市場であるアメリカに、PSA(プジョー・シトロエン)もルノーも今は参入していないこと。が、地元欧州でも近年、市場が急速に拡大していて、ついにプジョーも自前のクロスオーバーである3008を投入することになった。
車名から連想されるとおり、ベースになったのは308。ホイールベースが5mm長いだけだから、プラットフォームの基本は共通と言っていい。でも、全高を120mm高く設定し、下半身のたくましさを強調した独自のスタイルを採用することで、3008はきちんと流行りのクロスオーバーへの転身を遂げている。
さらには、運転席アイポイントも101mm高い設定。シートに腰を下ろす瞬間から、ハッチバックの308とは別の世界が展開することになる。そこでの注目は、スポーツカー風に仕立てられたコクピット。高めのアイポイントと、囲まれ感を演出した運転席のクロスオーバーが、3008の新鮮なドライビング感覚のカギを握っている。「これが今のスペシャルティカー」という印象だ。
ちなみに、プジョーのなかでも特別なキャラクターを備えるモデルに与えられるのが4桁のネーミング。ひとつ上には三菱アウトランダーのOEM版である4007が存在し、こいつは本格指向のSUV。対する3008はムード優先(現時点の設定は2WDのみ)で、きちんと棲み分けが図られていることもわかる。
では、プジョーが自信を持って送り出した自前クロスオーバーの実力は?3008の車重は、308SWと比べてもやや重い1540kgで、試乗前には「加速が少しかったるいかも?」という不安もあった。
だが、発進から走りは力強く、勾配のきつい峠でもストレスはまるでなし。そして、高速域でも「爽快」と表現できる速度の伸びを示すのだから、思わずにんまりしてしまう。
BMWとPSAが共同開発した1.6L直噴ツインスクロールターボは、元来実力派のエンジン。そこに改良(ユーロ5排ガス規制への対応を主な目的)を加えた最新型は、じつは140馬力から156馬力へとパワーアップしているのだ。
で、より以上の効果を発揮しているのは、4速から6速への二階級特進を果たしたAT。想像以上の力強さや、大幅に高まった洗練度にも納得がいく。小排気量ターボとは思えないほどの実用域のねばり、ハイレベルな静粛性、回転フィールの上質さも光るところで、実力は2.4Lクラスと肩を並べるもの。家族でのロングドライブでも十分頼りになる。
そして、シャシーの能力も高い。17インチ50タイヤを履くプレミアム(グリフは18インチ)でもハンドリング性能は優秀で、ステアリングを切るとスッと素直に向きを変えてくれる。ペースを上げてもS字できれいな切り返しを披露し、中高速コーナーでも高いロードホールディングを保つのだから見事なものだ。
印象的なのは、きれいに動くサスとそれを支える強いボディ、そして自然なフィールの電動油圧式パワステ。高めの重心のネガを意識させず、スポーティカーばりに爽快なフットワークを楽しませてくれる。しかも、プジョーに期待するしなやかな乗り心地も兼備するのだから、調教は絶妙。「個性的造形」と「洗練の走り」の高度なクロスオーバーこそが、3008最大の魅力と言える。
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