06年に日本導入されたRクラスは、ビジョンGST(グランド・スポーツ・ツアラー)から発展したメルセデスの新世代MPV。2代目Mクラスと基本を共有しながらも、スタイルを低く流麗に仕上げ、3列シートキャビンを盛り込むことで、幅広い用途に応える新ジャンルモデルに仕立て上げたものだ。
そのRクラスが、このほど大がかりなフェイスリフトを実施。丸目マスクが温和なムードを醸し出していた前作に対して、眼光鋭いヘッドライトと大型グリルを採用した新型は、押し出し感や重厚感が目に見えてアップ。「メルセデスらしく変身した」と、多くのファンが歓迎しているに違いない。
では、そのほかの進化は? 北米生産モデルは全般に質感がもうひとつの印象だったが、内装トリム、シート形状などを変更した新型は、そこに改良のメスを入れたカタチ。試乗車は本革シート(前席電動式)などを標準装備するラグジュアリーパッケージで、メルセデスらしい上質感に磨きをかけている。
技術面に関しては、V8モデルの廃止を除けば大きな変更はなし。だが、新型のR350に乗ると、熟成を実感できた。大柄な4駆MPVであるRクラスの車重は2.3トン級だが、3.5L V6と7速ATのコンビは、高速ハイペース走行や峠の上りの場面でも、満足できる加速力とゆとりを提供してくれる。上まで引っ張ると少し野性味ある音質になる点は不変だが、静粛性全般も改善されているように感じた。
そして、シャシーに関しても改めて高い実力を確認できた。R350クラスの魅力は、ドーンとした安定性、落ち着きある挙動がもたらす安心感に満ちた走り味にあるが、じつはハンドリングも優秀なのだ。おだやか&しなやかと、正確&スポーティを高次元で両立させている点が光る。ただし、20インチ45タイヤは低速域のドタドタ感が気になるので、タイヤは「標準設定の18インチのまま」をお薦めしたい。
|