ナビゲーターの導入に続いて、フォードジャパンが新たなるモデルを日本市場にリリースした。リンカーンMKXである。その違いはボディとエンジンのサイズ。これらを小さくしてナビゲーターの弟分に位置させた。以前はそれをエクスプローラーベースのアビエーターというモデルが担っていたが、それをMKXにスイッチしたカタチとなる。
そんなアビエーターとの大きな違いはボディ構造である。こいつはラダーフレームをベースとするSUVではなく、いわゆるCUV(クロスオーバー・ユーティリティ・ビークル)。つまり、モノコックシャシーのパッセンジャーカーライクなクルマなのだ。エンジン横置きのFFパッケージ+4輪独立懸架がその正体。日本へは導入されていないが、フォード・エッジ、マツダCX9とハードウエアを共有する。ちなみに、アメリカでのリンカーンラインアップは、前述した2台のSUVとMARK LTというピックアップトラック、それと3台のセダンで構成される。MKSとMKZ、それと伝統のタウンカーがそれだ。
さて、MKXだが、エンジンは269馬力の3.5LV6DOHCを搭載する。これはフォードグループの汎用ユニットで、本国でもMKXはこの1本となる。ただ、日本仕様は4WDのみだが、アメリカではFWDも選べる。トランスミッションは6速ATと組み合わされる。
ボディサイズはナビゲーターのそれとは異なり、全長が4750mmと短くなるのが特徴。全幅は1900mmを超えるが、全長は日本で大きな利点になる。全長5mオーバーとは明らかに気の使い方が変わってくるからだ。この全長とワイドボディがバランスよく見える。個性的なマスクと存在感のあるたたずまいが、国産車にはない独特な雰囲気を醸し出す。標準の18インチを20インチにアップすれば、存在感はさらに増幅するだろう。とはいえ、大きすぎるホイールはデザインが下品になるばかりか、操縦安定性や安全性にも関わるので、くれぐれもやり過ぎには注意していただきたい。
ドライバーズシートに座って感じるのは、リンカーンらしい高級感を持つこと。パイピングの入ったレザーシートとウッドパネルはもちろん、70年代のアメリカ車をイメージさせる角形メーターがいい感じに備わる。ナビゲーターもそうだが、“モダンラグジュアリー”を謳うリンカーンのデザインはヨーロッパ車を含め、世界のトップクラスにある。
動き出しはスムーズで、オールドアメリカンにあるようなアクセルを踏んでからボディが動き出すといったところはない。現代的なクロスオーバービークルらしく乗用車的だ。ハンドリングもクセはなく、ニュートラルなフィールを手のひらに伝える。また、エンジンもそれと同様で、フラットトルクでストレスなくクルマを前に進める。体感的なものは排気量以上で、中間加速も不満はない。その分逆をいえば盛り上がりに少々欠けるともいえなくないが……。
そんななかで一番気に入ったのは乗り心地。ダンパーの減衰力を高めた足は、街中から高速コーナーまでフラットライドを実現する。今回はリヤシートに乗る時間を設けたが、そこでの乗り心地もいいものに仕上がっていた。いうなれば高級感いっぱいで、ヨーロピアンプレミアムに匹敵する。もし潜在的にアメリカ車はちょっとと思うのであれば、なおさらディーラーにいって試乗することをお薦めしたい。リンカーンのイメージがガラリと変わるはずだ。
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