「ONE FORD ストラテジー」
先日新型クーガの試乗会でそんな言葉が発せられた。生産拠点の集約、プラットフォームの共有化、生産効率のアップを図ることを目的としたスローガンだ。ガソリンエンジンやクリーンディーゼル、ハイブリッド云々と、複雑化する環境に対応する戦略である。VWでいうところのMQBといったところだ。新型ゴルフのフロア上部にある重要パーツをグループ内で共有するのと似ている。
絞られた生産拠点は全部で4カ所。アメリカ、中国、ロシア、スペインで、ここから世界戦略車が生まれる。日本仕様はスペインのバレンシア工場が担当するそうだ。
そしてその第一弾がフォーカスであり、第二弾がこのクーガとなる。クーガは2008年に誕生し、2010年から日本でも売り出されたSUVで、エスケープ消滅後エクスプローラーの弟分となった。アメリカでは、クーガをエスケープの名で販売し、ミドルサイズのフォード・エッジを含め3兄弟で展開中だ。
新型クーガの目玉は、なんと言ってもやはりエンジンだろう。これまでの2.5L直5ターボは最新の1.6L直4ターボとなった。これはエクスプローラーに積まれる2LのECOブーストエンジンのスケールダウン版だ。サイズからすると2.5Lユニットは少々違和感があったがそれは解消された。
それと同時に今回トランスミッションも5速ATから6速ATに進化した。多段化はそのまま省燃費につながるのだから当然といえば当然の措置。結果JC08モードという日本の燃費換算では、7.8km/Lから9.5km/Lへと飛躍的にのびた。
がしかし、マニュアル操作のスイッチはいただけない。エクスプローラーと同じ親指で操作するサム(親指)スイッチがシフトノブに付くのだが操作性に欠ける。小さいボディで小気味よく!とはいかないのが少々残念ではある。
では、実際に走らした印象をお話しよう。まず、ドライバーズシートに座って感じるのは、座る位置がクルマの中央に近いこと。これはフロントピラーとの距離がありダッシュボードに奥行きが生まれることで感じる。いわゆるキャブフォワードというパッケージングで、現行エクスプローラーと同じだ。よって、ここに座るとガンガン走るというのではなく、ゆっくりおおらかに流すといった気分になる。
とはいえ、エンジンのレスポンスはよく、走り出しから軽快にスッと前へ出る。低回転からトルクを発生させるターボが効率的に働いているからだ。1.6Lだが体感的には2L自然吸気並みといっていいだろう。ただ、トランスミッションをATモードのままにしておくとギヤがどんどん上がり燃費走行へ向かうため、中速領域での抑揚がない。この辺でもうひとつ「味」があってもよさそうだ。
それでも「あの」サムスイッチを使ってワインディングをスポーティに走ると、足さばきはよくステアリング操作に対する俊敏な挙動とリヤサスの粘りはレベルが高いのがわかる。トルクベクタリングがアンダーステアをきれいに修正する。なるほど、フォーカスベースというメリットはここで顔を出すのか……。
ところでクーガは、「キネティックデザイン」というのを前面に押し出している。キネティックはフォードが使うデザイン言語で、「動的」を表すもの。確かに、眺めていると“攻め”を感じさせる。このクラスとしては、十分にクオリティが高い。走りのパフォーマンスも納得の領域にあるといえるだろう。
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