日本では3代目となるチェロキーが登場した。日本では"と限定したのは、アメリカは先代からリバティという名で販売されるから。つまり、本国的にいえばリバティの2代目というのが正しい言い方となる。
ただ、見てわかるように、今度のチェロキーは初代復活と言いたくなるようなデザインをまとう。スクエアなスタイリングはまさにあの日本でも大人気となったチェロキーだ。
では、なぜ今ジープはチェロキーを先祖帰りさせたのだろう。その答えは兄貴分コマンダーにある。じつは次期グランドチェロキーとして開発されたそれは、初代チェロキーのデザインを復活させたものである。つまり、彼らは初代チェロキーのデザインをジープのアイコンとして考えたのだ。あの四角いカタチこそ、ラングラーと二分するジープのアイデンティティというわけである。
よって、新型チェロキーもその考えに則り、初代のそれをデザインコンセプトに掲げた。そして出来上がったのが、どこからどう見てもジープファミリーとわかるこのカタチである。
ところで、このスタイリングを見て、勘のいい読者なら「ダッチ・ナイトロと同じ?」と思ったに違いない。そう、こいつのハードウエアはほぼナイトロと共有する。「それじゃ、ジープの走りは大丈夫?」という疑問も次に湧くかもしれない。が、ご安心くだされ。ナイトロは一足先にリリースされただけで、シャシーやパワートレーンはチェロキー用。つまり、チェロキーがダッジ化したのではなく、ナイトロがジープ並みの潜在的なオフロードパフォーマンスを持ったということだ。
新型チェロキーに積まれるエンジンは3.7LV6SOHCで、最高出力は205馬力を発揮する。これはOHVのボイジャーに積まれるエンジンとは違い、グラチェロに積まれる4.7LV8の2気筒を削ったもの。今回は燃焼室を見直すことで、低速トルクの向上と静粛性を高めるよう改良している。
で、実際に走らせてみると、トルクが太くなったことで出だしがスムーズになり、アクセルを踏み込む量も少なくなった。この辺は省燃費にも繋がることだろう。ついついガバっと踏んでしまっていたアクセルも簿妙なコントロールがしやすくなったといえる。とはいえ、いまどき4速ATというのも少々寂しい。高速巡航では回転数が高くなり振動やエンジン音が気になり始める。ただ、こういったところが気になるのは、クルマとしてのクオリティが上がっているからだ。NVH対策で、これまでのジープのイメージと期待は大きく変わった。低中速時の遮音性はファミリー中でも優れている。
ついでにいうと、コーナーでのスタビリティは高く、深いロールで思わずアクセルを戻すといったことはない。むしろロールを抑え、ステアリングに対してニュートラルな挙動を見せる。この味付けは目下、高級SUVのトレンドともいえる。レンジローバーを筆頭とするヨーロピアンSUVに近いチューニングだ。
そんな満足度の高い走りをもたらすが、ドライビングポジションは少々いただけない。右ハンドルでは張り出したギヤボックスが足元を極端に右にオフセットする。つまり、通常アクセルのある場所にブレーキがきてしまうのだ。これだとほかのクルマから乗り換えた直後は怖い。
なんて欠点もあるが、それでもトータルな出来映えは想像以上。走行性能はもちろん、ユーティリティと装備を考えれば、「いい買い物」と呼べる1台に仕上がっている。