3代目E36の時代に追加されて以来、クーペはずっと3シリーズを構成するバリエーションのひとつだった。でも、E46、E90を経て、F30でついに独立。クーペ系モデルは晴れて「4シリーズ」を襲名した。
ファンには周知だろうが、1シリーズのクーペも「2シリーズ」へと昇格。これで、セダン系は奇数、クーペ系は偶数という、BMWの新しい車名ルールが確立される。なら、クーペ系の中核モデルとなる4シリーズの魅力はどこにあるのか?
3シリーズの時代から、クーペ系はフロントフェンダーやフードまでを専用化していたが、新世代クーペではデザインの差別化がさらに加速。見どころは、ロー&ワイドのプロポーションとグッと張り出したリヤフェンダーで、スポーティさやエレガントさが一段と強調されている。
存在感や高級感は、ハッキリ言ってひと昔前の6シリーズに匹敵するほど! 「3」ではなく「4」を名乗るのも、素直に納得できる。
導入モデルとなったのは、2L直4の428iと3L直6の435i。いまのBMWだから、心臓はもちろん直噴+ツインスクロールターボで、428iは245馬力/35.7kg m、435iは306馬力/40.8kg mのハイパフォーマンスを誇る。
まずは428iだが、2Lターボと8速ATのマッチングは一段と良好になった印象がある。ドライビング・パフォーマンス・コントロールを「コンフォート」にセットしたままでもゆとりある走りを提供し、「スポーツ」では0→100km/h加速5.8秒に象徴される速さを楽しませてくれるのだから、満足度は高い。
もちろん、6気筒の435iと比べれば回転フィールの滑らかさや静粛性は見劣りするが、さすがはBMWで並みの4気筒とは格の違う上質な仕上がり。6気筒を積む「3」のクーペから乗り換えても、納得させられる出来映えと言っていい。ただ、サウンドの官能性の相違には後ろ髪を引かれるかもしれないが……。
なら、435iの実力は? こちらはMスポーツを試したが、動力性能も、ハンドリングも冴え渡るもので、旧335iクーペからの進化をより強く実感した。豪快と表現できる加速力に加えて、きわめて正確で限界も高いハンドリング性能や、エレガントに乗りこなせる日常性能も備えているのだから、ある意味万能のクーペと言ってもいいほどだ。
速度域にかかわらず快適度の高い乗り心地に関しては、電制ダンパー採用のアダプティブMサスペンション(オプション)が、大きく貢献していることも付け加えておく。
それほど高い完成度を誇る4シリーズで唯一気になったのは、うねりに対するサスのいなし方。標準サスに、オプションのバリアブルスポーツステアリングと19インチタイヤを組み合わせた428iは、ハイスピードで連続したうねりに遭遇すると暴れるような挙動を示し、ステアリングキックバックもあった。
程度はグッと軽いが、アダプティブMサス付きの435iMスポーツでも同様の傾向があったから、これは専用設計のフロントサスに起因するクセなのかもしれない。
現行BMWでもっとも低い重心高(500mmを切る)とワイドトレッド、そして専用セッティングのサスがもたらすハンドリングはきわめてファンで、「4」独自の存在感を主張するカギになっている。が、この一点だけは今後の熟成に期待する。
BMWのことだから、そこは安心して見ていていいはず。現時点においては、ノーマルサス+19インチのコンビはボクとしてはお薦めしない。
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