自動車メーカーとしてのスケールを拡大させるべく、プレミアムブランドであるBMWが小型車セグメントに本格的に参入したのが、初代1シリーズを発表した2004年。専用に開発され、独立したモデルとして登場した初代1シリーズは、BMWの期待どおり6年間で100万台を突破するヒット作となった。
7年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型は、クラス唯一の後輪駆動と約50対50の前後重量配分による優れた走行性能はそのままに、各要素をブラッシュアップして登場した。そのねらいは、初代で獲得したファンをキープしながら、より幅広くユーザーを取り込もうというもので、事実そのための方策は念入りだ。
7シリーズとの共通性を連想させる丸みを帯びたボディは、サイズも従来モデルと比較して長さ95mm、幅15mm、高さ40mm、さらにホイールベースを30mmそれぞれ拡大。前席に大柄なドライバーがポジションをとっても、後席足元には余裕がある。FF方式を採用するライバルと比べて劣勢だったリヤシートの居住性が改善されたことは大きなニュース。
さらに、インテリアも最新のBMWテイストで仕立てられ、シートに座った際の印象は、エントリーモデルであることを感じさせない。全モデルに8.8インチワイドディスプレイとiDriveを標準装備としたことも、多く機能を備えながらも、洗練されたデザインを実現した要因だ。
メカニズムについては、「効率」と「パワー」を両立させるエフィシェントダイナミクスの設計思想により、環境性能を大幅に強化した。 エンジンは、同じグループ内ではMINIに使われている直噴1.6L 4気筒ターボを縦置きにして搭載する。116iと120iの出力の違いはマネージメントによるもので、メカニズム的には共通。トランスミッションはクラス初の8速ATとなる。
さらに、アイドリングストップ機構、ブレーキ・エネルギー回生システム、電動パワーステアリング、そしてエンジンレスポンスやシフトタイミングに加えてエアコンの制御を行なう「ECO PROモード」など、さまざまな環境技術を採用。全モデルで、「平成22年度燃費基準+25%」および「平成17年排出ガス基準75%低減レベル」を達成して、エコカー減税対象モデルの認定を受けている。
質感が高まったのは内外装だけではない。走り出してすぐわかるのが、乗り心地の進化だ。先代モデルでは段差を乗り越える際に衝撃を素直に伝えていたが、新型の最新ランフラットタイヤとサスペンションの組み合わせは、衝撃の角をきれいに丸めてくれる。初代がコンパクトカーらしいさわやかですっきりとした乗り味だったとすれば、新型のそれはしっとりとした上質感を身につけた大人っぽいもの。それでいながらコーナーではBMWブランドに期待する機敏な身のこなしを披露するのだから気持ちがいい。
新パワートレーンは、116iでも十分なトルクを発揮してくれるが、上級グレードの120iはさらに上手。高回転域までパワー感が続き、あらゆるシーンで余裕をもたらす。
ターボエンジンと8速ATは静粛性の向上にも貢献していて、新型1シリーズの走りは、もはや3シリーズに近い領域にあると言えるだろう。 初代モデルの弱点を克服しながら、チャームポイントであった走りの楽しさに磨きをかけた新型1シリーズ。その仕上がりは、デビュー時点ですでにかなりのレベルに達しているのは確か。ダウンサイジングが進む時流に乗って、初代同様この新型もヒット作となりそうだ。
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