強きものこそ美しい。そんな、少しばかり強引なフレーズにも説得力を持たせてくれるのがこのS7スポーツバックというクルマ。4枚のドアを持ちながら、ルーフの中央からリヤエンドにかけてのラインを大胆に落ち込ませて見事なクーペスタイルを構築する、A7スポーツバックの高性能バージョンである。同時にデビューしたS6とメカニズム面でほとんど共有しているが、セダンスタイルにアバントという構成のS6に対し、こちらは4ドアクーペのみの設定で、ターゲット層はいささか異なっている。
搭載されるエンジンは4L V8ツインターボで、最高出力はS6と同じ420馬力を発揮。7速Sトロニック+クワトロシステムを組み合わせることで、このハイパワーでもしっかりと路面を捕らえる安定したドライブパフォーマンスを実現し、後輪駆動のライバルたちに差をつけているのが美点と言える。
しかし、S7スポーツバックの真価は、あくまでも流麗なボディフォルムを持ちながらハイスピードクルーズをも可能とするその多才さにある。A7スポーツバックと違いが少ないように見えるが、細部を見るとシングルフレームグリルやエアインテークのフィンがクロームのダブルラインに変更されたり、リヤにはデュアルエグゾーストが採用されるなど、細かなディテールが異なっている。ハイウェイで追い越し車線を走り去る姿は、優雅さのなかに野性的で精強な印象を後続車に与えることだろう。
また、インテリアの設えも高級クーペの水準を大きく上まわる。バルコナレザーのスポーツシート、高級な機械時計を思わせるメーターパネル、カーボンの装飾パネルなど、体を滑り込ませると思わず息をのむ贅沢な空間が広がる。ひとクラス上の高級感を味わえるのもまたSモデルの特徴。これでSモデルは下がS3上がS8まで揃ったが、S7スポーツバックはとりわけ燦爛たる魅力を放っている。
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