販売台数の好調が伝えられるアウディから、さらなる魅力的なモデルが日本市場に導入された。
Q3はSUVマーケットの主流が大型モデルから中・小型へとシフトしていく状況を受けて開発されたコンパクトSUV。これによりアウディはQ7、Q5、Q3という3車種でSUV市場を幅広くカバーする。
ターゲットユーザーは都市生活者で、Q5よりもボディサイズ、とくに全長を大幅に短くすることで、都市部での取りまわしのよさを意識。デザインについても、Q5より一層クーペライクなルーフライン、そしてA1のようなスラントしたテールゲートを与えるなど、スタイリッシュさを強調している。
Q5とのサイズ差は、実際に路上に出るとかなり効くことがわかる。
今回試乗コースとなった箱根の温泉宿付近は道幅が狭く、大きなクルマに乗っていると対向車とのすれ違いやUターンなどで気を遣うことが多い。そんなシチュエーションでもQ3にストレスを感じることはほとんどなかった。オーバーハングが短く、なおかつコーナー部分がカットされているため、最小回転半径5.7mという数値以上に鼻先が入り込んでいく印象なのだ。1.8mを超える全幅についても、運転席からの視界が十分に確保されているため、思ったよりも気にならない。
室内空間はアウディが得意とする分野で、このQ3についても部品同士の合いや質感が上手にコントロールされており、上質さは申し分がない。とくにレザーシートとウッドパネルが備わるレザーパッケージ(30万円のオプション)装着車の雰囲気は高級感にあふれる。
メカニズムに目を向けてもアウディらしさが光る。キーワードは、「軽量」、「高効率」、「クワトロ」だ。
まず軽量について。Q3のプラットフォームはA3をベースとしたものだが、SUVとしての強靭さと軽さを両立させるために、軽くて強度の高い熱間成型の超高張力鋼板をセンタートンネル、ルーフフレーム、サイドシル、Bピラーに採用。高張力鋼板と合わせてボディ全体の74%にハイエンドスチールを使用している。さらに、ボンネットやテールゲートをアルミとすることで、重量を1610kgに抑えている。
各メーカーがしのぎを削っているパワートレーンの効率についても、Q3は優秀な結果を出している。
エンジンは、2L TFSIガソリンユニットで、211馬力と170馬力の2種類を用意(170馬力版は今秋納車予定)。これに7速Sトロニックを組み合わせ、スタートストップシステムとエネルギー回生システムも採用。211馬力仕様の12.6km/L(JC08モード)という燃費は、競合するBMWX1の11.4km/L(XDrive20i)を上まわっている。
走らせてすぐ感じられるのが、操作に対する反応の正確さとスムーズさ、そして車内に静かさが保たれていること。これらはまさしくプレミアムブランドの面目躍如だが、エンジンやトランスミッション、そして自慢のクワトロの存在を、いい意味で感じさせないのがアウディ独特のフィーリングだ。
今回のテストドライブでは悪路や悪天候を試すことは叶わなかったが、アウディは状況が悪くなればなるほど真価を発揮するブランド。視界が遮られるほどの豪雨の中でも緊張感なく走れるクワトロの安心感は、女性ユーザーも多いだろうQ3には嬉しいはず。
これだけの内容を盛り込みながら、ベーシックな170馬力版が409万円からと価格競争力も十分なQ3。同じく2Lターボとクワトロを採用するA3 2.0TFSIクワトロの463万円よりもリーズナブルな価格に設定されていることを考えると、Q3のバリューは極めて高いと言えるだろう。
|