おしゃれでスポーティなMINIは、独身またはカップルのクルマというイメージがあるが、じつはファミリーカーとして立派に使えるモデルも存在する。とくに注目なのが、4モデル目として登場したMINIクロスオーバーだ。
写真●内藤敬仁/GooWORLD
MINIのエッセンスを散りばめた
コンパクトクロスオーバー
現在流行しているコンパクトクロスオーバーの嚆矢となったのがこのモデル。発表当初は「どこがMINI?」と疑問に思うユーザーもいたが、じつは4ドアを備えるクロスオーバービークルとして最小サイズという意味でしっかりMINIしている。コンセプト面だけでなく、デザイン面でもMINIにしか見えないスタイリングは見事だ。4mを超えるボディサイズの内部には、やや高めのシートポジションを5人分用意。新機軸の収納スペースとして、多目的に使えるセンター・レールを備え、そこにカップホルダーや携帯電話などのアイテムをフレキシブルに収納することが可能。最大で1170Lを誇るラゲッジルームも使い勝手がよく、家族旅行にもしっかり対応する。
家族の1台になりうる多用途なMINIたち
MINIをファミリーカーとして迎え入れようとしたときに、もっとも多い反対意見が「2ドアが不便」という声だろう。確かに、後席に乗り降りする度にドアを開けてもらってシートを前にスライドさせるというのを、面倒くさいと感じる人は多いかもしれない。じつは小さい子供を持つ場合は、勝手にドアや窓を開けられる心配をしなくて済む分、気がラクではあるのだが……。
もちろん、メーカーもそんな声が出るのはわかっていて、MINIらしさを維持しながら、よりユーティリティを高めたバリエーションモデルの開発に早くから着手していた。それは、日本には2007年に導入されたクラブマンの開発コードが、2代目ハッチバック(R56)よりも若い(R55)ことからも推測される。
ホイールベースを延長し、運転席側に「アシンメトリック・クラブドア」を採用したクラブマンは、MINIらしさはそのままに広大な荷室空間と後席へのアクセスしやすさを実現したモデル。ただのワゴン版ではなく、スタイリングに往年のクラブマン・エステートのエッセンスを取り入れることで、伝説のクラシックミニへのヘリテイジすら感じさせるのだから見事だ。
かつての伝説をトレースすることで、ファンに違和感を抱かせることなく順調にボディバリエーションを増やしていったMINIだったが、2010年に挑戦的な新モデルクロスオーバーを発表する。4枚のドアと4輪駆動による「4×4」コンセプトを持つクロスオーバーは、MINIの常識を軽々と飛び越えてみせた。ファンの反発を不安視する声も一部上がったが、果たしてその結果はといえば大成功。いまや全モデル中でも有数の売れ筋モデルとして成長している。
MINIワールドへの入場券は、ファミリー向けにもしっかりと用意されているのだ。
MINI クーパー クロスオーバー オール4(6速AT) | |
全長×全幅×全高: | 4105×1790×1550mm |
車両重量: | 1440kg |
エンジン: | 直4DOHC |
排気量: | 1598cc |
最高出力: | 122ps/4600rpm |
最大トルク: | 19.3kgm/1350-4600rpm |
燃料消費(JC08モード): | 12.7km/L |
タイヤサイズ前後: | 205/60R16 |
価格: | 267万2000〜447万円 |
(クロスオーバー全グレード) |
MINI JCWクラブマン(6速MT) | |
全長×全幅×全高: | 3990×1685×1430mm |
車両重量: | 1260kg |
エンジン: | 直4DOHCターボ |
排気量: | 1598cc |
最高出力: | 211ps/6000rpm |
最大トルク: | 28.6kgm/1750-5500rpm |
燃料消費(JC08モード): | 16.3km/L |
タイヤサイズ前後: | 205/45R17 |
価格: | 279万9000〜430万円 |
(クラブマン全グレード) |
ハッチバックのデザインはそのまま
使い勝手を大幅にアップ
ファミリーカーといっても、つねにフル乗車ではないという使い方をするならば、クラブマンという選択肢もかなり魅力的だ。クラシックミニでも存在した由緒正しいバリエーションモデルということもあり、ルックスや走りも含めてのMINIらしさをクラブマンなら満喫できる。最大の特徴である運転席後方のクラブ・ドアは、左側通行の日本では車道側に開くというデメリットがあるが、そもそも運転席を開いてから操作するという仕組みを考えると、ドライバーがサッと操作できて都合がいいという考え方もできる。ハッチバックよりも80mm延長されたホイールベースのおかげで、後席に潜り込んでしまえば意外に快適。観音扉の荷室ドアもユニークかつ使いやすい。
- 初の4枚ドアが可能にした
フレキシブルなMINI - 後席へのアクセスを容易にしてくれる後席ドアを備えるのが最大のポイント。ハッチバックよりもホイールベースが130mm長いこともあり膝前にも余裕がある。後席側のガラスが下がるのも嬉しいところ。
- あくまでもMINIを軸足に
使い勝手を増すクラブドア - 荷室容量はハッチバックよりも250L多く最大で680L。観音扉の内側にも収納スペースが用意されている。乗車定員はクロスオーバーより少なく4名。室内のデザインもハッチバックと同様でMINIらしさにあふれる。