キーワードは“3S”
ボディサイズによるクラス分けを意味する言葉で、なおかつ自然に“格”をわけてきた「セグメント」
その概念から解き放たれた、自由闊達なキャラクター性で我々を魅了する
プレミアム系コンパクトカー。事実、お値段的にも旧世代のEセグカーに匹敵
小さくても高級・高価値な「リッチコンパクト」の秘密と魅力に今月は迫ります!
文●GooWORLD 写真●佐藤亮太

以前は、「リッチのためのクルマ」であったリッチコンパクト
しかし、それは今、「クルマそのものがリッチな存在」となっている
その歴史は、セカンドカーからファーストカーへの変遷でもある
セカンドカーからファーストカーに
英国貴族がパーティ会場に愛車のオースティン ミニで乗りつける。
少し前までのヨーロッパでは、普段運転手付きのロールスやベントレーの後席に収まっているような富裕層が、プライベートで自らコンパクトなセカンドカーを運転することがもはや通例となっていた。そしてそれがまた、リッチコンパクトの本分であるようにさえ思われていた。
リッチコンパクトのなかには、下にも紹介したヴァンデン・プラ プリンセスなどのように、「お金持ち」のセカンドカーとして誕生したクルマもあった。大衆向けモデルのモーリスをベースとしながらも、その室内には上質のウォールナットとレザーが奢られ、フロントシートのバックレストには、ピクニック・テーブルすら装備されていた。日々高級な物に囲まれて生活するオーナーたちの厳しい眼識に適うべく「高級に」造られたクルマであったのだ。
ところが今日、リッチコンパクトの概念は大きく変わってきている。これまで「リッチのための小型車」であったものが、「クルマそのものがリッチ」になってきているのだ。
プライベートでの買い物や街乗り用の、あくまでセカンドカーとして使われていたのが以前のリッチコンパクトであった。それに対して、スタイルや走り、内装も豊かになり、クルマ自体がリッチになったのが現在の欧州系コンパクトだ。
ビジネスはもちろん日常の移動、長距離の旅行から、高級ホテルのエントランスに乗りつけても引け目を感じさせないクルマ。マルチな使い方ができて、「コレ1台で足りる」魅力にあふれているのだ。そして、あたりまえだが、これらリッチコンパクトを所有するにあたって、高級車を所有する必要性はない。コンパクトカー自体が豊かな存在となることで、万人向けのクルマとなる……。
たしかに往年のリッチマンズ・コンパクトには独特の魅力、雰囲気があるのだが、だれもが快適さ豊かさに気軽にアクセスできる、民主化された今日のリッチコンパクトの登場を素直に歓迎したい。
- ミニ
- 1959-2000
- ●驚きの居住性、走りなど、自動車史に革命をもたらした長寿の傑作コンパクト。
日本には正規輸入されなかったが、「もっとも高価なミニ」として、カブリオレも存在した。
- ヴァンデン・プラ プリンセス
- 1963-1974
- ●富裕層がロンドン市内を快適に移動できるようにとつくられた小さな高級車。
- アウトビアンキ A112
- 1969-1986
- ●ミニに影響を受け、ミニマムボディに抜群の使い勝手と十分な装備を誇った。
- アルファロメオ アルファスッド
- 1971-1984
- ●ジウジアーロがデザインし、上質なハンドリングと足まわりに定評があった。
- ルノー ルーテシア
- 1990-1998
- ●本国名は「クリオ」で、日本では装備を充実させて小さな高級車を標榜した。
- プジョー 205
- 1983-1998
- ●スポーティでスタイリッシュなコンパクト。走りも軽快で大ヒットを記録。
- ローバー 200
- 1996-1999
- ●BMW入りしたローバーの独自開発。英国流の気品漂う内装に仕上げている。