スペシャルショップのショールームを飾る、かつて憧れていた名車たち。
今となっては価格そのものは手頃に落ち着いてきているものの、
いまいち購入に踏み切れない……
だれもが心配する購入後の維持について、本当のところをプロに聞いてきました
いいクルマと出会えるかがその後の運命を左右する
ちょいクラのある暮らしに憧れていても、いまいち一歩踏み込む勇気が持てないという人、けっこう多いのではないだろうか。
その理由の多くが年式の古さから想像される購入後のトラブル。自分には維持することが難しいのでは、と腰が引けてしまうその気持ち、わかります。でも、恐れているだけでは物事は前に進まない。というわけで、最新モデルからちょいクラまで何でもござれの整備のプロに、素朴な疑問をぶつけてみた。
取材に協力していただいた『カレントテックセンター』は、輸入車のなかでもとくに趣味性の高いレアモデルやちょいクラを得意としている『ガレージカレント』のグループ会社。当日もファクトリーにはW124の500Eや正規もののAMG、ポルシェ928などといった好きな人にはたまらないクルマたちが入庫し、メンテナンスを受けていた。
お話を聞かせてくれたのは、サービスフロントの鈴木さん。
「クルマは機械ですから、新車だから壊れないということもないし、古いから壊れるとも言えません。ただ、古いクルマは個体差が出やすいということは言えます。きちんと管理されていたクルマなのかそうでないのか。購入する時の納車整備の内容によっても大きく変わります」
クルマは機械の集合体で、不具合には必ず原因がある。消耗品の交換を先延ばしにしていれば周囲の部品まで巻き込んだ“故障”に発展するのは当たり前のこと。当時の技術力の問題などによって、ウイークポイントを持つクルマは確かに存在する。しかし、古い輸入車が壊れるという“常識”は、きちんと手当を受けてこなかった中古車を買ってしまった人の悲惨な経験が広まったという側面も否定できない。
「たとえばポルシェでも、964ならパーツの供給も豊富です。ウチでもこの年代のポルシェのお客様はたくさんいらっしゃいますが、しっかり整備すれば、普通に乗れますよ。ただ、928のような希少車になると、どうしても部品の入手に時間がかかったり、パーツ代も高価だったりすることがあります」
鈴木さん強調していたのが、まず購入する時点で、しっかりとした物を選ぶということが肝心だということ。たとえば同じ車種の中古車2台があったとして、程度良好で300万円のクルマと程度のよくない150万円のクルマがあったとすると、修理費に150万円かからなければ安いのを選んだ方がお得……と考えるのは危険なのだとか。
もちろん、ある程度割り切ったうえで付き合うのも、それはそれでひとつの見識。しかし、憧れ、惚れて手に入れるのだから、コンディションのいい状態で楽しんだほうが、カーライフが充実するのは明白だ。
中古車買いに抜け道は無し。程度のいい物件を購入し、設備とノウハウを持った整備工場と付き合うことにつきる。現状を把握して、メンテナンス計画を立ててくれる信頼のできる主治医と出会えれば、きっとあなたのちょいクラ暮らしはハッピーなものになるだろう。

●「これ!」と思えるクルマに出会えたら、信頼のできる主治医を探すことが、幸せなちょいクラ暮らしのキーポイントになる。


●964型911のスポーツ性をさらに引き上げたレアモデル「RS」が整備を受けていた。とくにポルシェのようなクルマは、詳しいメカがお店にいるかどうかが重要。ほかのオーナーの口コミや紹介を受けるのも有効だ。
整備をすれば見返りがあるのもちょいクラのいいところ
1.ゴムブッシュを新品にすることは
リフレッシュ効果大
人間でいうところの関節の軟骨のような働きをするのがゴムブッシュ。サスペンションをはじめ、あらゆる箇所に使われていて、交換すると乗り心地や振動などがかなり改善する。部品代は安いものの、交換工賃が発生するため、メカと相談して、効率的に交換する計画を立てていきたい。
2.新品のダンパーで
しゃっきりとした走り味を再現
せっかく憧れのクルマに乗るのだから、性能やフィーリングについてもなるべく当時の新車に近づけたいもの。なかでもダンパーは、ブッシュ交換同様に効果を実感しやすい部品。純正品は場合によってかなり高価となるが、社外の同等品で安く済ませたい場合は品質に注意したい。
3.鬼門となるATも
オーバーホールで新品同様に
高額修理の代名詞であるトランスミッションの故障。ほとんどのクルマが修理可能で、最新型のクルマが修理不可の新品交換なケースがあることを考えれば、かえって安心できる。また、ATF(オイル)を定期的に交換することで、フィーリング回復や寿命を伸ばす効果も期待される。
4.補機類の整備で
本来のパワーを発揮させる
よほどコンディションを落としていない限り、エンジンそのものがダメになることはあまりない。むしろ、周囲の部品が劣化した状態ゆえ本来のフィーリングを発揮していないクルマも多い。点火、燃料、吸排気がきちんと機能しているか、センサーは働いているかをチェックしておきたい。
思い込みと間違えた知識で無駄なメンテナンスをしないために!
YESホイールアライメントを調整すると燃費がよくなる?
ホイールアライメントとは、車体に対する車輪の取り付け方のこと。これが基準値から大きく外れているとクルマがまっすぐ走らず、タイヤの片減りや燃費の悪化にもつながる。測定と調整を行なうことで、直進安定性やコーナリング性能も回復する。
YESアーシングをすると電気系の性能がアップする?
バッテリーのマイナス端子側の配線を増やすアーシングは、コードなどが劣化したアース不良気味の古いクルマには有効。スターターや充電系の負担を軽減できる。ただ、プラスの配線と接触すると車両火災の危険もあるため、DIYでの施工には注意が必要だ。
NO省燃費型オイルを入れるとエンジンの負担は軽くなる?
エンジンオイルは、自動車メーカーとオイルメーカーが共同で開発するため、指定以外の粘度を入れるとトラブルの原因になる。また、古い設計のエンジンの場合、シール類を痛めることにもつながり、オイル漏れを引き起こすことにもなるのだ。
YESひとつのショップと長く付き合ったほうが維持費は安くなる
ショップと長く付き合うことのメリットは、計画的な整備による効率的なメンテナンスにある。とくに経験の豊富なメカニックは、次にどのような消耗品が交換時期にくるのかを考えてくれる。維持費も安く、トラブルも未然に防いでくれることになる。
NOガソリンに混ぜる水抜き剤はクルマにやさしいってホント?
かつて、燃料タンクの内側についた水滴によってタンク内がサビ、それが燃料パイプなどにつまるトラブルがあった。しかし、ちょいクラ世代でももはやそういったトラブルは対策されていることがほとんど。添加剤のたぐいも、入れないほうがベター。
NOエンジン始動時の暖気運転は長時間しっかり行なうべき
そもそも暖気運転とはゆっくりと走りながらクルマ全体を暖めること。停車してエンジンだけかけていても、ミッションやデフなどのオイルは暖まらないし環境にも悪影響。クルマの取り扱い説明書に記載があるので、それに従うのが正しい方法。