このボディのコンパクトさがいまの911にはない魅力なんだよね
ちょいクラに乗ることで見えてくるものとは
自動車ジャーナリストとして活躍している九島さんは、毎日のように最新モデルをテストするその一方で、プライベートではポルシェ911の水冷最後のモデルである993型を所有するちょいクラオーナーだ。
九島さんにとって993は、“水冷”への思い入れというよりも、かつて「ポルシェを着る」と形容された、そのコンパクトなボディサイズに魅力を感じているという。それをもっとも実感できるのが、運転席と助手席の距離の近さ。5眼メーターや垂直ダッシュボードといった要素は現行型にも盛り込まれているが、このタイトさは993までだ。
●ルーフを残しつつ天板部分がスライドするタルガは、「開放感とプライバシーのバランスが日本で乗るには丁度いいんだよね」と九島さん。
新車の評論活動と並行して、ヒストリックカーのイベントにも積極的に参加している九島さんは、そこで出会う愛好家たちの刺激もあって、各ブランドの歴史を強く意識するようになったという。そして、ちょいクラと暮らすことは、ブランドそれぞれのルーツを体験することにも繋がるのだとか。
「たとえば、993の前にジャガーのXJ-Sに乗っていたんだけど、そのことで、現在のXKに乗った時に、運転席から見える景色やステアリングなんかの位置関係が同じだと気がつけた。ジャガーはそこまで考えて作っているんだなって」
クルマから個性が薄くなったと言われる現代で、プレミアムブランドがなぜプレミアムでいられるのか。そのヒントを教えてくれるのが、クラシック(歴史)と現代とをつなぐミッシングリンクとなる、ちょいクラなのかもしれない。
●最後の空冷式エンジンを搭載する993。環境性能などメカニズムとしての性能はもちろん最新の水冷モデルにかなわないが、空冷エンジンにこだわるファンはまだまだ多い。

●伝統の5眼メーターを始め、クラシカルな雰囲気をたっぷりと味わえるインテリア。運転席と助手席の距離が近いのも、この993の特徴とのこと。
「ちょいクラ」チョイス3カ条
1.日常使いやすいコンパクトなサイズ
2.身近に置きたくなるデザイン
3.ブランドの個性を感じる乗り味
知り合いから購入したという96年の911タルガは、いわゆる993型で走行距離は現在5万7000km。約2年の間で1万kmを走行したという。丸みを帯びたクラシカルなスタイルがモダンな自宅ファサードに対して美しいコントラストを描いている。
自動車ジャーナリスト九島辰也さん
ポルシェ 911(993型)
自動車雑誌の編集長などの経験もある自動車ジャーナリスト。専門誌はもちろんのこと、ファッションや旅、サーフィンといった自身のライフスタイルを活かしたコラムを執筆している。993のほか、Gクラスにも興味津々!?
思わずちら見する ちょいクラモデル
LANDROVER RANGE ROVER / ランドローバー レンジローバー
「最近イギリス車に注目しているんだ」という九島さんが選んでくれたのは、レンジローバーの初代モデル。1970年の登場から96年まで生産され「砂漠のロールス・ロイス」と称されたイギリスを代表する高級SUVだ。イギリスで程度抜群の個体を試乗してから、その素晴らしさを再認識したという。