今年度、編集部は当たり年だと言っているが、個人的には数こそ多かったが不作も多かったと思っている。そのなかでひっそりと光っていたのがVWティグアンだ。これは欧州でもそれなりの地歩を築いているRAV4やCR-Vのライバルとすべく、ゴルフVのフロアを、一部パサートのコンポーネンツを使いつつ容量アップし、その上にゴルフよりひとまわり大柄なボディを立て込んだSUV。と聞くと何だか安易な仕立てを想像してしまうが、これがじつに悪くない仕上がりだった。
悪路走破性を鑑みての車体強化はきちんと結果を出しており、ことにフロアが分厚い感じがする。ゴルフVは上屋が非常にカタいため、かえってフロアが相対的に弱い感じがするのだが、ティグアンではそれが消えている。パサートのアルミ製サブフレームは、物理的な剛性はともかく、足元からゴソゴソという振動間が伝わってきて高級感を殺くが、そういうこともない。
オフロードでの融通性を仕込まれたアシは、乗り心地も操縦性も穏やかにまとまり、モデル後期でセッティングが散らかった感のある本家ゴルフよりずっと自然な感触だ。薄味のステアフィールも、タイヤの違いからかずっと濃く、好印象。4WD駆動系も、やたらと曲がりたがるようになった最新のゴルフR32と打って変わって、安定方向に躾けられて動きは優しい。もしかすると、ティグアンは今の末期ゴルフVで最も感触のいいモデルかもしれない。
2nd Recommend
JAGUAR XFジャガー XF
これは英断だ……でなくて何と呼ぶ!
XFでジャガーは「伝統の英国調」をきっぱりやめた。しかし、である。ジャガーの「英国調」は、あくまで商売の上でのことだった。音楽やファッションを見ても、イギリスは常にアバンギャルドであって、「古き良き」ってやつはあくまでジャガーの商売上の確信犯的な戦術なのだ。日本で言えば「フジヤマゲイシャにカラテ」であるそういう商売をXFは敢然とやめた。とりわけ内装には「最新の高級」を目指した意欲を感じる。その勇気は評価されるべきだ。
主要諸元
- 08年モデル ジャガーXF3.0プレミアム
ラグジュアリー(6速AT)
- ●全長×全幅×全高
- :4970×1875×1460mm
- ●車両重量
- :1750kg
- ●エンジン形式
- :V6DOHC
- ●総排気量
- :2967cc
- ●最高出力
- :243ps / 6800rpm
- ●最大トルク
- :30.6kgm /4100rpm
- ●新車価格
- :870万円