あらゆる状況にきちんとフィットする クルマの基本型にして定番
人はついつい足し算でクルマを考えがち。すると、大きな荷物も積めたほうがいい、人はいっぱい乗れたほうがいい、悪路や雪道もガンガン走れたほうがいいと、頭の中に浮かんでくるのはワゴンやミニバン、SUVの姿だ。でも、自分のライフスタイルに当てはめてみれば、せっかくのプラスαの才能が年に数回の出番もない……という宝の持ち腐れパターンが多いもの。逆の見方をすれば、大抵の場面や状況は、1台のセダンで十分にこなせるということだ。
むしろ、走りや快適性、燃費や環境のことを考えれば、ムダなサイズ、重量、空気抵抗をまとっていないセダンのほうが、いろいろな場面にはるかにスマートに適合する。近頃はとんでもなく速いSUVも存在するが、重く、重心が高いクルマを速く走らせることには根本的な無理があるのだ。で、結論。「運転を純粋に楽しみたい」、「本質のスポーティや快適を追求したい」というのなら、セダンに乗るのが正解だ。
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カジュアル、フォーマルどんな場面でも 使えるオールマイティさが魅力
私にとって「セダン」は、「ワンピース」のようなもの。男性のファッションアイテムでいえば「ジャケット」……でしょうか。ワンピースはもともと私の好きなアイテムなので、普段から着用率も高いし、私の部屋のクローゼットにはかなり多く埋蔵(?)されていますが、海外に行くときや日本国内でも泊りがけ取材の時には、スーツケースに必ず1枚以上ワンピースをしのばせておきます。ビジネスシーンでも使えそうだけど、あまりカタすぎないコンサバティブなワンピースが1枚あれば、洒落たレストランでの急なディナーのお誘いにも気後れしなくてすむし、ゴージャスなアクセサリーをコーディネートすれば、華やかなパーティ仕様にも早変わり。女性にとってはかなりのお役立ちアイテムです。一方セダンも、突然のゲストもスマートにエスコートしてくれるし、乗り降りも楽々。あらゆるシーンをソツなくこなしてくれる強い味方です。
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森野恭行
本誌でおなじみの自動車ジャーナリスト。その膨大な自動車の知識と、それをわかりやすく解説する丁寧な語り口には定評がある。試乗会にも積極的に参加する。 |
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吉田由美
自動車専門誌だけではなく、一般誌でも活躍するカーライフ・エッセイスト。女性ならではの目線で語るクルマ選びは斬新。元モデルで容姿端麗、ファンも多い。 |
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日々の疲れを癒してくれる サプリメントな存在
それは砂漠の中にあるオアシス。このひと言に尽きる。現在自身で07年式のメルセデス・ベンツC200コンプレッサーを所有し仕事の足として使っているが、どんなに忙しくとも車内にいるときはつねにリラックスすることができるし、その空間に癒される気がする。ご存知のようにCクラスは新型になってスポーティさが増したわけだが、それでも走りの中にはかつてからの重厚感や落ち付きは残されており、長距離走行を厭わないどころか、むしろどこまでも走り続けても構わないと思えるだけの感触に満ち溢れている。そしてスピードの高低に関わらず一度そこに座りエンジンをスタートさせれば必ずホッとできる時間を提供してくれるのだ。
だから例えば箱根まで行って何台ものクルマを試乗した後や、長い打ち合わせが終った後など、Cクラスのドアを開けシートに座ると、疲れているはずなのに運転が嫌だとは決して思わない。なにかこう乗るほどに心が豊かになり、自分に栄養が与えられるような感覚がある。だから僕はスポーツカーも所有する一方で常にセダンをガレージの横に並べ所有しているのだ。
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セダンのチョイスは 人となりを映しだす鏡
独身女性の立場からすると、私がクルマに求めるものは、自分自身の個性が主張できるスタイルを備えていることが第一条件。つまり、クルマは前席主体で少々荷物が積めればそれで十分。ともあれ、家族や友人を連れてディナーでも……っていう話になれば、みんなでお出かけできるセダンも便利かな?と、たまに思う程度で、後席はつねに使うワケでもないから、それほど必要とも思わない。ましてや、オヤジのイメージを与えてしまうようなクルマなら、少々使い勝手が悪くても2枚ドアのクーペのほうがマシだと思ってしまう。セダンは居住性を意識するあまり、どこかポッテリしたエクステリアデザインが多い。その点、欧州セダンはちょいワルオヤジに似合いそうな個性豊かなスタイリングで、なおかつアウトバーン仕込みのスポーティな走りも備わっている。女性としては、こうしたセダンを上手に乗りこなす男性にエスコートされたら、たまりませんよね。ただ、女性がステアリングを握ってスタイリッシュに乗りこなせるセダンを探してみると、意外と車種が限られてくるような気もしています。
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河口まなぶ
セダン、スポーツカー、ミニバンなどカテゴリを問わず、クルマ全般を鋭い切り口で評論する若手自動車ジャーナリスト。走りの気持ちよさには一家言アリ。
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藤島知子
S耐レースクイーン、レーサーという経歴を経て、現在は若手の女性自動車ジャーナリストとして活躍中。クルマを見る目もたしかで、男性顔負けの切り口が魅力
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