少し暑くて、肌をなでる風が心地よく過ぎて行く。気まぐれな自然が、梅雨の合間に見せる初夏特有の空気。
夏の香りをミックスしたような風に誘われて、緑が恋しくなった。
関東近辺には、ちょっと足を伸ばせば自然を満喫できるところがたくさんあるけれど、今回はいちばんスケールの大きな富士山をセレクト。山麓の広大な湖群「富士五湖」を巡り、胸の奥に溜まったでっかい自然欲を満たそうという企みだ。
都心から約2時間。富士山の火山活動によって作られたという富士五湖のうちのひとつ「西湖」に到着。
キラキラと輝く湖面に負けじと、あたりの木々が、まぶしいほどの緑を反射して通り過ぎて行く。
西湖は富士五湖のなかで4番目と、それほど大きくはないが、最大水深では2番目。フジマリモの群生地としても知られ、ほかの富士五湖のうち本栖湖、精進湖と地下で繋がっているともいわれる。透き通った深緑色の水面に富士山がその姿を落として、幻想的な景色を作り出している。
木漏れ日が遊ぶ森を抜け、湖畔に降りる。なぜだか水はひとの心を落ち着かせる。深く体の奥底に染みるまで、森の香りを包んだまま湖を渡ってきた新鮮な空気を吸い込む。とっても贅沢な気分を味わえるひとときにうっとりとする。