欧州車のモデルサイクルは一般的に5〜7年ほど。それを知れば、「ゲレンデヴァーゲン」と名乗った時代から数えて35年もの間、基本を変えずに生産を続けるメルセデスGクラスが、いかに長寿かがわかるはず。
しかもロートル扱いではなく、「オフローダーの王様」として今も世界のファンの憧れの存在であり続けているのだ。AMGモデルの拡充や新世代クリーンディーゼルの搭載など、昨今も改良の手を緩めてはいない。
生産終了の噂が流れたこともあったが、消えたのはショートボディの2ドアモデルだけ。ロング4ドアは「まだまだ現役」をアピールする。そう、熱狂的なファンがGクラスの引退を許さないのだ。Mクラスが登場しても、GLクラスが追加されても、「G」の存在は揺るぎない。
そんなGクラスを技術面から見れば、ボディはフレーム式、サスは前後コイルリジッド式と、今のSUVのトレンドに乗ってはいない。でも、SUVの時流がクロスオーバーの方向に振れたからこそ、昔気質のGクラスの個性や魅力が逆にクローズアップされた、という見方もできる。
昔気質の仲間にはランドローバー・ディフェンダーもあるが、これはベースの技術がさらに20年も古く、技術的アップデートもあまり進んでいない。「マニア向け」のカテゴリーにとどまるのはそれが理由だ。
対するGクラスは、トレンドの変化やユーザーニーズの多様化に合わせて、たゆまぬ改良を続けている。とくに、快適性のレベルアップや操縦安定性の進化は目を見張るほどで、21世紀に通用するプレミアムSUVにきちんと仕立て直されている。
パッと見の印象は、憧れのゲレンデ(今もこの愛称で呼ぶファンが多い)そのまま。分厚い鉄板を使用する「鎧」を連想させるボディや、がっしりしたドアの開閉感も昔ながらの感覚だが、車内に目を移せば……。内装はモダンかつ高品質なつくりで、COMANDシステムに代表される現代のハイテク装備も完備している。加えて、走りの能力や快適性も現代に十分通用するものなのだから、ファンが惚れ込むのも当然だ。
古き良き時代のメルセデスの重厚感と、現代の高級SUVに求められる洗練度を見事に融合させたGクラスは、まさに唯一無二の存在なのだ。
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