北米を中心としたSUV人気の盛り上がりにあわせて、ジープブランドは近年、積極的に車種構成の拡充を図ってきた。日本未導入のコンパスを含めると、今では5つのモデルを揃えるまでになっている。
でも、ブランドの根幹を支えるのは、今でもやっぱりラングラー。1941年に誕生した画期的な軍用車、ウィリスMBの直系にあたるラングラーは、とことんタフで、頼りになるJEEPを象徴する存在だ。
そんなラングラーが、大きな変革を成し遂げたのは07年モデル。先代はCJシリーズの発展型といえる内容だったが、すべてを一新することで、モダンなSUVへと変身した。
とくに注目を集めたのは、ロングホイールベース4ドアのアンリミテッドが仲間入りしたこと。これは、マニアックなSUVフリークだけでなく、ラングラーが幅広いファン層にアピールできるモデルに発展したことを意味する。2ドアモデルの後席は「あれば便利」程度のものだが、アンリミテッドは家族ユースも余裕でこなすのだから、違いは大きい。
となると、「ラングラーも軟弱になったもんだ」と眉をひそめる人もいるだろう。でも、安心していい。ラングラーの本質であり魂は不変だ。ボディ構造は頑強なラダーフレーム式、サスはオフロードで頼りになる前後リジッド式、そして4駆メカは2速副変速機付きのパートタイム式と、タフなジープの精神は現行型にもきちんと受け継がれている。
そして、より以上にファンの心を掴むのは、ひと目でジープとわかるルックスだろう。全面変更を行いつつ、イメージを変えない戦略は成功している。今、世界には数え切れないほどのSUVが存在するが、これほどわかりやすく、強烈な個性を発散するモデルはない。確立したアイデンティティが、SUVの元祖にして本家といえるJEEPの強みだ。
ちなみに、2ドアをベースに新旧比較をすると、ホイールベースが50mm、前後トレッドが95mm拡大され、全長、全幅、全高もひとまわり以上サイズアップしている。そこから、ホイールベースと全長を520mm拡大してつくられた4ドアのアンリミテッドは、堂々とした体躯を持つ。
とはいえ、4705×1880×1845mmの3サイズは、国産SUVならランクル・プラドと同等のレベル。しかも、北米生産ながら全車右ハンドルでの導入だから、日本の環境下においても、ラングラーは十分適応できる能力を備えている。
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