159に積まれて登場したときから、2.2JTSはスムーズさと静かさが光っていたが、現在は上質さにより磨きがかかった印象。かつてのツインスパークのような官能性は持ち合わせないが、スポーティな走りを楽しむのに十分な能力を備える。
それと組み合わせられるのは6速になったセレスピード。勢力拡大中のDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)と比べると、変速の速さ、スムーズさは見劣りするが、Dレンジのシフトアップも、発進や微速のクラッチミートも不満のないレベルでこなす。「スパイダーをイージーに乗りこなしたい」という人の要望に応えるメカ構成だ。
ただし、車重1650kgと重めのため、185馬力からイメージするほどの速さやスポーティさは期待できない。スパイダーをスポーツカーとして捉え、速さや迫力も望むファンには、グッとパワフルで、エキゾーストノートを含めてよりスポーティな演出の3.2JTSが向いている。
Q4を採用するため、1860kgと車重はよりかさむが、ひとつ上の動力性能とフルタイム4WDならではの高度な高速スタビリティを備えることはたしか。シャシーもさらに引き締まった印象で、ハンドリングの正確性もFFの2.2JTSより上だ。
ちなみに、試乗した2.2JTSは19インチを標準で履く特別仕様車だったが、タイヤ選択は性能よりルックス重視という感じ。ハンドリングは鋭いものの、高速レーンチェンジなどでの挙動の収まりはあと一歩のレベルで、低速域の乗り心地やロードノイズも少しの荒っぽさが残る。オープンボディのスパイダーの場合、18インチぐらいまでのタイヤのほうが、マッチングはいいだろう。
だが、トップを開けるとロードノイズがこもらなくなり、心地よいエキゾーストノートがダイレクトに耳に届くようになるから、快適と快感のレベルは一気に上昇する。加えて、心なしか足の上下動もスムーズに感じられるように……。スパイダーの走りと快感の真髄を味わいたいなら、積極的に幌を開けて走るべし、だ。
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