VWが欧州市場にトゥーランを投入したのは03年。ルノー・セニックやオペル・ザフィーラなどが、すでに小型ピープルムーバー(日本でいうミニバン)市場を開拓していただけに、やや出遅れた印象がある。
でもVWといえば……1950年誕生の初代トランスポーター(タイプ2)以来、カラベル(別名ヴァ
ナゴン)、シャランなどを送り出し、欧州マルチパーパスビークル市場を牽引してきた存在。「ついに真打登場」と多くのファンから歓迎され、瞬く間にクラスのリーダーになった。
そんなVWの新世代戦略車は、知ってのとおりゴルフVと同時並行的に開発が行われ、プラットフォームやメカニズムの基本を共用する。そこでハッチバックのゴルフと比べれば、3列7人乗りモデルに仕立てるため、ホイールベースを100mm、全長を215mm、全幅を30mm、全高を150mm拡大している。だが改めて数値を見ると、「想像していたほど大きくないな」と感じるのでは?
全長はワゴンのヴァリアントより145mmも短く、市場で競合するグランセニックやシトロエンC4ピカソと比較しても全体に少し小柄だ。パッケージ効率のよさが光る。
ゴルフのファミリーであることを明確に示すため「ゴルフ・トゥーラン」の車名で登場した日本でも、ファンに素直に受け入れられた理由がそこにある。3列シート車でありながら、日常ユースでも十分扱いやすいボディサイズを持つことが大きな才能。家族のクルマとしての要点をはずしてはいない。ボクシーなスタイルにあまり洒落っ気はないが、質実剛健のイメージはの伝統と合致するもの。まじめさを取り柄とする、じつにVWらしい小型ピープルムーバーがトゥーランなのだ。
そして、07年の改良でトゥーランは一段と魅力を高めた。前期型のパワートレーンは1.6&2LFSI(自然吸気直噴ガソリン)+アイシンAW製6速ATだったが、ここで1.4LツインチャージャーTSI+6速DSG(デュアル・シフト・ギヤボックス)に全面変更された。
後期型のウリは、直噴の利点を生かす高度な2段過給メカが生む2クラス上のトルク(2.4L級に匹敵)と、その力を走りのゆとりと高効率につなげる先進のツインクラッチ式オートメーテッドMT。あわせて、クローム仕上げワッペングリルやメタル調インパネ加飾パネルなども新採用。内外装の質感にも磨きをかけて、完成度を大きく向上させた。
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