先代S40/V40と、現行のS40/V50の生い立ちは根本から異なる。前作は360、480と発展したオランダ製ボルボの末裔で、じつは三菱カリスマとプラットフォームを共用するモデルだった。が、現行型は、ボルボがフォードのPAG(プレミアム・オートモーティブ・グループ)の一員になってから開発されたモデル。基本技術を共有するのは……そうフォード・フォーカスやマツダ3(日本名アクセラ)だ
ここで基本技術という微妙な表現を用いたのは、一般的な「プラットフォーム共有化」のケースよりも、各ブランドに課された開発の制約が少ないから。ボルボは安全、フォードは操縦安定性、マツダはコスト低減と、各ブランドが得意分野でイニシアチブを取りつつも、ブランドの個性を形成する部分では互いに一歩も譲らずに開発を行ったという。
共同開発の場合、妥協がブランドの血を薄めるケースが少なくないが、フォード系3社が行った新世代Cセグメントモデルの開発は、理想的な「WIN・WINの関係」を築くことに成功した。だから、セダンのS40、エステートのV50とも、濃厚なボルボ・テイストを実感できるモデルに仕上がっているのだ。
そこでグループとしてのセグメント戦略に注目すれば、ボルボが担当するのはプレミアムの分野。先代は4気筒のみだったガソリンユニットを、5気筒メインに格上げしたのはその象徴で(欧州では4気筒やディーゼルも設定)、S40/V50にはメルセデスC、BMW3、アウディA4に代表されるDセグメントモデルとも渡り合えるサイズ、性能、クオリティが与えられている。
また、視点を変えてV50を捉えれば、4520×1770×1480oの3サイズ、2640oのホイールベースは、短めの全長を除けば、大成功を収めた850エステートに近いことがわかる。「今のV70は大きすぎる」と不満をもらしつつも、ボルボらしい存在感や上質さにこだわるファンにも、V50はしっかりとアピールする才能を有するわけだ。
そして07年9月リリースの08年モデルでは、前後スタイルをリニューアル。フロントは目鼻立ちをよりハッキリとさせ、リヤはコンビランプ、バンパーに加えフェンダーも変更してシャープなイメージを強調。新型V70直系の洗練されたデザインを取り入れることで、一段とステイタス性を高めることに成功した。
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