メルセデスがクーペの戦略見直しを図ったのは90年代半ばのこと。当時は、Sクラスベース(現在のCLとEクラスベースの2モデルを設定していたが、W115…W123…W124と続いたアッパーミドルのクーペを廃止し、よりコンパクトなモデルに切り替えたのだ。
それが、96年に登場したCLKクラス(W208)。ベースは初代Cク大人のための気品漂うラグジュアリークーペラス(W202)で、モデル名最後の”K”はドイツ語のKompactの略。CLの弟分にあたる、コンパクトなラグジュアリークーペを意味する。上級セグメントに偏っていたクーペを上と下に分散させることで、より幅広い顧客層をカバーできるようになったことは言うまでもない。
では、宿敵のBMW3シリーズのように、クーペをCクラスのバリエーションに組み入れなかったのはなぜか?
それは、Eクラスクーペからの乗り替え層にも満足してもらう必要があったからだ。前後スタイルやメーターパネルをW210・Eクラスとそっくりに仕上げたのは、クラスダウンを感じさせないための造形マジック。スポーティ一辺倒ではなく、CLKは大人っぽさや落ち着きを漂わせるメルセデスらしいクーペに仕上げられていた。
そうしたCLKの戦略は成功を収め、02年に投入された2代目のW209もガッチリと路線をキープ。フロントマスクはW211・EクラスというよりR230・SL風だが、リヤビューやメーターパネルはまさにEクラスのクーペ版の印象で、いずれにしても一見しただけでは先代Cクラス(W203)を母体としたクーペとはわからない。ホイールベースを25o、全長を75o、全幅を20o拡大するなど、W208よりボディを少し大型化したこともあり、クラス感を確実にアップさせた。
また、Bピラーを廃止して、兄貴分のCLと同様のいわゆるハードトップ形式のボディとなったのも大きな注目点。サイドビューや、後席からの眺めはさらにすっきり。クーペとしての個性や価値を高めるとともに、クーペとコンバーチブルの作り分けもより容易な構造とした。
そして、04年の改良時にはシャシー設定を見直し、05年のマイチェンではフェイスリフトを実施。横バーが3本から2本になったフロントグリルや新造形のリヤコンビランプ、洗練されたデザインに変身したインパネのセンタークラスターが、後期型W209の明確な識別点だ。
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