小が大を飲み込む」は、現在のポルシェとVWの関係を示すもの。グループ全体で年間約620万台を生産するVWに対して、ポルシェの規模は10万台レベルに過ぎないが、今やポルシェオートモービルホールディングスSEはフォルクスワーゲンAGの筆頭株主なのだ。31%の持ち株比率を50%以上に引き上げ、結びつきをより強くする計画が進む。
90年代半ばには瀕死の重傷と言われたポルシェなのだから、Dr.ヴィーデキングがCEOに就任してからの回復と成長のストーリーはまさに劇的! そこで近年のポルシェ史を振り返れば、復活の起爆剤になったのは、新世代水冷フラット6を積んで96年にデビューを飾ったタイプ986ことボクスター! ファンには言わずもがなだが、車名はボクサー(水平対向エンジン)とロードスターを合体させた造語だ。
90年代半ばは、欧州を中心にオープン2シータースポーツのルネッサンスが起こった時期だが、BMW、メルセデス、アルファなどのライバルに対して、ボクスターはパフォーマンスとブランド力で格の違いを見せつけたカタチ。ミッドシップということで、伝説の名車「550スパイダー」の再来をイメージづけるデザイン&イメージ戦略も見事にはまり、旧来のファンにも新規のファンにも歓迎されるヒット作になった。
924…944…968と発展した4気筒FRモデルは「プアマンズ・ポルシェ」の印象を最後まで拭えなかったが、ボクスターは911とまったく異なる個性と魅力で勝負したのが成功のカギ。ポルシェのユーザー層、ファン層の拡大にも大きく貢献し、瞬く間にポルシェを支える柱の1本にまで成長した。
そして04年末。05モデルでボクスターは、第2世代のタイプ987にスイッチした。見た目の印象からもわかるように、進化の度合いはフルチェンジというよりビッグマイチェンに相当するが、それでも8割におよぶパーツが新設計されている。
たとえばエクステリア。全幅を20mm拡大し、タイヤ外径を大きくするとともに、カレラGTをイメージさせる精悍なマスクを与えてダイナミックな印象を加速させたのが見どころ。シャシー、パワートレーンにも当然のように進化のメスが入る。
加えて、07モデルではエンジンを増強しパフォーマンスを一段とアップ。年を重ねるごとに、987はポルシェらしさに磨きをかけている。
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