新車試乗レポート
更新日:2018.11.11 / 掲載日:2016.06.16
メルセデス・ベンツ GLC 試乗レポート(2016年06月)
GLCは、GLA、GLE、GLSとともに、名前も新たにメルセデスのSUVファミリーを形成するが、その「ピントが合った」感覚は尋常ではない。ステアリングを握る者を魅了する要注目モデルだ。
メルセデスが示すSUVの新たなる境地
先代のGLKはそれなりに走りの魅力をもったモデルだったが、同クラスのBMW X3やアウディ Q5ほどにはヒットしなかった。その理由のひとつが当時の4MATICは構造的に右ハンドルを造れなかったことにある。また、流麗で都会的なデザインが支持されるなかでちょっと武骨でボクシーなフォルムも人気を得られなかった要因だろう。
ところが、メルセデス・ベンツ全体の車名整理によってGLCと改められた新型は、そういったネガティブ要素が一切なくなった。4MATIC+右ハンドルが可能になり、デザインは最新のメルセデス・ベンツ・ファミリーの一員。ジャーマンスリーのなかでもっとも官能的と言っていいだろう。高級感のあるインテリアや充実した安全装備も含め、今度は売れそうだ!という予感が濃厚に漂ってくるが、試乗してみてそれは確信に変わった。
近年のメルセデス・ベンツは、スポーティな走りを標榜し、デザインとの合わせ技でコンサバなイメージを払拭。それは世界市場でも日本市場でも成功しつつあるが、一方で乗り心地が硬めになる傾向も見受けられる。場合によっては同クラスでもBMWのほうが快適志向なこともあるぐらいだ。その点、GLCはスポーティさと乗り心地の快適さが絶妙なバランスにある。セダンよりもサスペンションのストロークが長くとられ、ちょっと重くなることもいい方向に働いていてしなやかで落ち着きのある乗り心地となっているのだ。それでいて、ステアリングを切り込んだときのレスポンスのよさや正確性の高さなどは、最新メルセデスのそれ。スポーティでありながら、昔ながらのメルセデス・ベンツらしい快適性との両立がなされている。
Cクラスと共有するプラットフォームによってボディの品質も高い。軽量・高剛性なだけではなく、騒音や振動が少ないことも大きな特徴となっている。遮音や制震なども優れているが、騒音・振動の発生も少ないようで、クラス随一の静粛性で快適。乗り心地のよさも合わせて上質感が際立っている。王者Sクラスにはかなわないかもしれないが、それに準ずるぐらいのレベルにある。
エンジンはいまのところガソリン2.0L直噴ターボのGLC250のみとなっているが、新世代の9速ATとの組み合わせで想像以上によく走る。1200~4000rpmで35.7kg mもの大きなトルクを発生する頼もしさは、あらゆる場面で感じられ、その一方でアクセルを踏み込んだときの吹け上がりも鋭く、右足の動かし方とクルマの反応がピタリとくるドライバビリティも秀逸。7速から9速へ移行したことは、動力性能や燃費だけではなく、走りの質感の向上にも役立っている。もしも7速のままだったら、とっさに強めの加速が必要なときはパドルに指をかけて任意にシフトダウンする方がストレスなく走れる場面も少なくないと思われるが、9速では右足の踏み込み具合でほとんど事足りる。
期待されるのは、さらに低回転域のトルクが充実するクリーンディーゼルで、それはさぞかし良さそうだと想像できるが、現状のガソリン・エンジンでも満足度が高いのは嬉しい発見だった。
都市部で使いやすいSUVとしてはGLAもあげられるが、FF系とFR系では走りの質感に少なからず差があることも実感。GLCの重量配分のバランスのよさやハンドリングから得られる歓びは格別なものがあり、かなりのクルマ通でも満足いくことだろう。商品力も含め、GLCに死角はないのだ。
文●石井昌道 写真●内藤敬仁
問い合わせ メルセデス・コール TEL:0120-190-610
Detail Check
広い室内を十分なラゲッジ容量を確保しながら、ダイナミズムとエレガンスが同居するデザインを実現している手腕は賞賛に値する。
コックピット
コックピット
インテリアはシンプルなデザインが一層引き立つ落ち着いたブラックで統一されている。8.4インチのワイドなディスプレイと直感的に操作できるCOMANDコントローラーの使い勝手も進化している。
インテリア
インテリア
シートは前後とも、しっかりとしたホールド感がありながら、ゆったりと座れる優秀な出来栄え。合皮&スエード調ファブリックの感触も心地よくロングドライブでも疲れなさそうだ。
エンジン
エンジン
リーンバーンと排気ガスの再循環装置を組み合わせたブルーダイレクトターボエンジンで、13.4km/L(JC08モード)の低燃費を誇る。
ラゲッジルーム
ラゲッジルーム
ラゲッジルームは最大1600Lのボリュームもさることながら、フラットなフロアと広い開口部、多彩な展開機能で実用性が高い。
主要諸元:GLC250 4MATICスポーツ(9速AT)
全長×全幅×全高 | 4670×1890×1645mm |
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ホイールベース | 2875mm |
トレッド前/後 | 1620/1615mm |
車両重量 | 1830kg |
エンジン | 直4DOHCターボ |
総排気量 | 1991cc |
最高出力 | 211ps/1200-4000rpm |
最大トルク | 35.7kg m/1200-4000rpm |
サスペンション前/後 | 4リンク/マルチリンク |
ブレーキ前後 | Vディスク |
タイヤサイズ前後 | 235/55R19 |
全国メーカー希望小売価格(発売 2015年8月)
GLC250 4MATIC(9速AT) | 628万円 |
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GLC250 4MATICスポーツ(9速AT) | 678万円 |
GLC250 4MATICスポーツ 本革仕様(9速AT) | 745万円 |
Body Color
□ポーラーホワイト ■オブシディアンブラック ■イリジウムシルバー □ダイヤモンドホワイト ■カバンサイトブルー ■ダイヤモンドシルバー ■セレナイトグレー ■ヒヤシンスレッド |
高性能を支えるボディワークの優秀さ
6つのレーダーセンサーとステレオマルチパーパスカメラを搭載し、世界最高水準の安全サポートを誇るレーダーセーフティパッケージを搭載するGLC。だが、見逃してはならないのが、究極まで鍛えられ、磨き抜かれた先進のボディワークだ。高い対衝突性能に加えて、低燃費のカギ、Cd値も0.31に進化。