最終回 ジャガーか?ランドローバーか?

GooWORLD特集記事 [2016.11.10 UP]

Special column:1
The 21st century for JAGUAR Brand
21世紀のジャガー

21世紀のジャガー

激動の20世紀に誕生し、伝統と格式を重んじながら優れたスポーツモデルを生み出し続けているジャガー。さまざまな困難を転機に変えながら、抜本的な改革と進化を続けるブランドは、近年、「革新」とも呼べるドラスティックな変化を自らにもたらしている。その意味と目指すところを解き明かしてみよう。

文●沢村慎太朗 写真●GooWORLD

伝統から革新に移る挑戦的なDNA

 ジャガーといえば、あの往年の平べったい「XJ」。人生のキャリアが長いひとにとってはそうだろう。

 当然だ。ジャガーは1970年代から21世紀に入るころまで初代XJとそれを忠実にフォローした後継車を大看板にして、あとはそこからクーペ&コンバーチブルを派生させるだけでやってきたのだから。

 初代XJは不思議なクルマだった。サルーンと呼ばれる種族は居心地が肝心だから、たっぷりと全高を採る。なのに往年のXJは、長さはたとえばメルセデスのSクラスと同じくらいあるのに背はずっと低かった。だから恰好よくて人気だったのだけれど、乗ってみれば空間はタイトで、あろうことか後席は窮屈だった。

 理由はXJがスポーツカーから生まれたクルマだったからだ。いまでもイギリス人が世界一美しいと自賛する60年代スポーツカーが「Eタイプ」。そのコンポーネンツを使って仕立てたのが初代XJだった。セダンから派生させて「スポーツカーでござい」と臆面もなく喧伝するメーカーは山ほどあるが、逆をやったのはジャガーとマセラティくらいだ。

 ちなみにジャガーは第二次大戦直後の創業時もそうだった。礎となったのはレースでも活躍したスポーツカー「XK120」の人気だったが、彼らはそこからサルーンを派生させて事業を拡大していった。だが50年代を経て60年代も半ばに差しかかるころ、その派生サルーンを大きめ、小さめ、中くらいと乱発したため、ラインアップが大混乱していた。その混乱に終止符を打つべく、すでに世界中で評価されていたEタイプを下敷きに初代XJが作られて、サルーンはこれに統一することにした。

 このバクチは見事に当たってジャガーは活気づいた。そしてEタイプの後継として今度はXJから派生させたXJーSを脇に添えた。70年代から90年代にかけて彼らはこの2車種だけで商売をすることになる。そのころ大不況に陥った英国自動車界は政府の指示によって大半のメーカーがひとつの会社に再編されてしまい、中型以下のクルマはほかに任せて、ジャガーは高級サルーン市場と高性能で豪華なGTを売ることが使命だった。こうしてスポーツカーから派生したはずのXJは英国を代表するサルーンになってしまった。王室も超フォーマルの場合にロールスを使う以外はジャガーXJとなり、その映像は世界に配信されてXJの存在感を固めた。あまりに独特で、そして依然として受けがよかったから、以降90年代までジャガーはデザインをそのまま引き継いでXJを世代交代させてきたのである。

 それが一変したのは20世紀の終盤。このときすでに90年の時点でフォードの支配下に入っていたジャガーは、当時の社長ジャック・ナッサーがVWのピエヒと競って由緒ある自動車メーカーを無闇矢鱈に買い漁っていたのだ。こうしてアストンやランドローバーやボルボといっしょの部門に組み込まれたジャガーは、21世紀に向けてフォードの指揮下で新しいビジネスプランに移行する。

 それは以前の異様な商品構成をやめて、一般的なセグメント分けに従ってモデル展開する作戦だった。第一弾はEセグメント(5シリーズやEクラスの階層)に投入するSタイプ。99年に登場したこれはフォードの後輪駆動プラットフォームを使って仕立てた。そして返す刀で01年にDセグメントに投入するXタイプを送り出す。そして満を持して02年に看板たるXJをフルチェンジ。それは大投資をして車体を総アルミに置換して軽量化という優位を築く一方で、一人前のLセグメントとして通用するように背を高くして居住性を確保した真のサルーンだった。

 だがドイツ御三家と張り合おうとするフォードのそうした戦略は成功しなかった。Xタイプは、フォードにこの階層の後輪駆動プラットフォームがなかったから必然的に前輪駆動のモンデオのそれとなり、3シリーズやCクラスの域には手が届かなかった。XJは往年のイメージをできるだけ維持させたまま背を高くしていたのだが、その戦法はいかにも中途半端で、ドイツ勢のような押出しもなければ、往年のXJのような優美さもないというビジュアルになっていた。Sタイプは背が高く丸っこい50年代のマークIIサルーンの現代版をねらっていたが、それが分かるのはイギリス人だけで、平べったいXJがジャガーだと思ってる世界のユーザーは理解できなかった。

 こんな風に世紀のはじまりにヘタを打ってしまったジャガーは、フォードのリストラ策によって08年にインドのタタ財閥傘下に渡される。そして起死回生を図るべく、前の世代の方針を一掃して大転換を図った。

 セダン系の基本は同じくDとEとLのセグメント分けに準じた構成。だが今度はD(XE)とE(XF)のために後輪駆動プラットフォームを開発してそれを分け合うことにした。しかもアルミ車体だ。おまけにXEに本格的に4WDも投入。アルミ&4駆というアウディもBMWもやっていない物量作戦で3シリーズやA4を攻略しようというわけだ。

 看板たるXJは、アルミ車体などの基本は引き継ぎつつ、かつてのXJへの未練を断ち切ったような斬新かつ新鮮なデザインを施してきた。その一方で、XKの後継となるFタイプでは往年のEタイプを思い起こさせる温故知新デザインを採用して、ノスタルジーを求める層に応えた。EセグメントではサルーンのXFだけでなく、SUV形態の車体も派生させて、そちらで北米やアジアでの台数を稼ぐドイツ勢を追走する。

 こうしてジャガーは過去の栄光に半端にしがみつくのをやめた。そのラインアップは21世紀を切りひらこうとする意気にあふれている。とりわけXEには持てるリソースを集中して注ぎ込んだ一世一代の勝負という雰囲気が漂う。昔を忘れてまっさらの目で見れば、そういう彼らの決意が分かるはずだ。

Profile
自動車ジャーナリスト 沢村慎太朗
●研ぎ澄まされた感性と鋭い観察力、さらに徹底的なメカニズム分析によりクルマを論理的に、そしてときに叙情的に語る自動車ジャーナリスト。

伝統のスポーティサルーンは、「XJ」に加えて「XF」、「XE」と、新しいデザインコンセプトのもとで充実ぶりが著しい。SUVモデル「Fペース」と2シーターモデル「Fタイプ」が、ブランド全体に若々しいイメージをもたらす。

イアン・カラム氏

躍進するブランドのキーマン、デザイン責任者イアン・カラム。ジャガー以外にもフォードやアストンマーティン、マツダなどで数多くのヒットモデルを手がける。

Special column:2
LAND ROVER RANGE ROVER
ランドローバーとレンジローバー

ランドローバーとレンジローバー

英国のみならず世界を代表するオフロードブランドのランドローバー、そして高貴な雰囲気の漂うレンジローバー。似て非なるSUVブランドの起源を振り返ると、それぞれの魅力とその棲み分けの意義が見えてくる。

文●九島辰也 写真●GooWORLD

同じローバーを名乗る異なる魅力のブランド

同じローバーを名乗る異なる魅力のブランド

 レンジローバーとランドローバー。その関係は、わかったようなわからないような方が多いのではないだろうか。見ようによっては兄弟会社にも、ライバル関係に思えなくもない。

 簡単に説明すると、会社は同じでブランドが異なる。キャラクターと価格帯で、棲み分けるといった格好だ。ちなみにレンジローバーを正確に記すると、「ランドローバー レンジローバー」。ランドローバーがブランド名でレンジローバーがモデル名だ。まぁ、そう呼ぶひとはほとんどいないだろうが。

 ご理解しているとおり、ランドローバーはワイルド路線でバリューフォーマネー、レンジローバーはラグジュアリー&高価格といったところ。もちろん、どちらもオフロードに長けているのは言うまでもない。

 では歴史を振り返るとどうなのか。そもそもはランドローバーが先にあった。英国に旧くからあるローバー社がつくったオフローダーというのが原点。ランド(土地)をローバー(走りまわるモノ)というのがネーミングの由来となる。創設は1948年のこと。要するに老舗だ。

 登場してからは、ランドローバーシリーズ1、シリーズ2、シリーズ3などと進化する。これらすべてのステアリングを握ったことがあるが、どれもワイルドな古典的オフローダーだった。英国陸軍がすぐに採用したのもよくわかる。第一次世界大戦を振り返ると、それまでの軍の移動手段はトラックとサイドカー付きバイクが主流だったからだ。

同じローバーを名乗る異なる魅力のブランド

 かたやレンジローバーの登場はそれから22年後の1970年となる。ベースとなったのは当然ランドローバーのプラットフォーム。それを違うテイストのデザインで仕上げ、中身を乗用車的にして、もっと乗りやすいものへと進化させたのだ。

 しかもターゲットは英国における伯爵や男爵といった位のある人々。当時彼らが夢中になっていたのは森の中でのハンティングで、ランドローバーは彼らの足になるクルマを開発した。ちなみに、レンジローバーのボディパネルには初めからアルミが採用されているのをご存知だろうか。よくこのことで、「当時から高級車であったためアルミを採用していた」なんて誤解される。その頃レンジローバーの生産拠点になったのは元航空機の工場で、アルミ加工機材がたくさん設置されていたのが本来の理由となる。それと、戦後の英国ではスチールが不足していた。ただ、結果的にそれは功を奏した。アルミは細かい傷がつくが、スチールのように錆びることがない。

同じローバーを名乗る異なる魅力のブランド

 では、現在に話を移そう。今日のラインアップは、レンジローバーシリーズは、レンジローバー/同スポーツ/イヴォーククーペ&コンバーチブル、ランドローバーシリーズが、ディスカバリーと同スポーツとなる。ディフェンダーはすでに今年生産終了した。傾向としては、レンジローバーシリーズのオンロード性能が高まっている。これはマーケットニーズがそうで、他ブランドのラグジュアリーSUVがそれを重視しているからだ。

 ランドローバーシリーズは使い勝手重視でアウトドア派に大人気。オフロード性能をさらに高めながら洗練されたデザインを持ちはじめた。次期ディスカバリーは見ものである。

 これが現状。ランドローバー、レンジローバーともに進化する老舗オフローダーなのである。

ランドローバーシリーズ1

これが1948年のアムステルダムモーターショーで発表されたランドローバーシリーズ1。第二次大戦後アメリカ軍の残していったジープが考え方のベースになっている。

レンジローバー

英国におけるオフローダーの性能チェックには、川を渡る能力も組み込まれる。両ブランドのどのモデルも高い能力を持つが、トップはレンジローバーの900mm。ボディの約半分が浸かっても大丈夫。

歴代レンジローバー

歴代レンジローバー。右から初代、2代目・・・と並ぶ。一番左の4世代目は2013年のデビュー。3世代目の注目ポイントはBMWエンジンが載っていたこと。どの世代も個性的で高い人気を誇る。

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