最終回 フランス車こそすべて

GooWORLD特集記事 [2016.05.12 UP]

Special Column
フランスをもっとよく知る

フランスの風景
花の都パリ、シャンゼリゼ通り。EU統合、単一通貨ユーロの導入で、文字どおり「ヨーロッパの首都」となる街には、さまざまな国のナンバープレートをつけた、多彩なブランドのクルマたちが行き交う。

クルマは、国ごとの特徴や民族性を強く反映すると言われる。フランス車は個性的なクルマづくりで知られるが、そもそも「フランス人」とはいったいどんなひとたちなのだろうか?

文●沢村慎太朗 写真●GooWORLD

世にも複雑怪奇なフランス人の成り立ち

 自動車雑誌を見ると、フランス車についてアレコレ書いてあります。たとえばアシがいいとか荷室が広くて使い勝手がいいだとか。大概それは当たってますけれど、そうじゃないものもあったりする。こりゃドイツ車なんじゃないかと思うくらいのもあったりと、例外のない規則はないという教訓を想い出すわけです。

 そのあたりは注目モデルについて語ってる前のページを読んでいただくとして、待てよと気になるのがフランス車を作ってるひとたち、つまりフランス人のこと。フランス人とはいったいどういうひとたちなのか。

 イタリア車は熱いだとかドイツの鉄は硬いだとか適当なことを書き飛ばしてる自動車雑誌を見ると、フランス車はイタリア車といっしょくたにされてラテン系だとかで括られてる。しかし、学術の上だとラテン系なんて人種の区分けなんぞ存在しないのです。ラテン系という区分けがあるものを強いて探すと言語かな。二千年前にローマ帝国で話されてた言葉がラテン語。ローマ帝国は広く西ヨーロッパ全域を植民地にしてましたから、そこでは支配者の言葉としてラテン語が公用語で使われた。となると地元のひとも話し言葉に使うようになってナマッて俗化し、やがて現在のイタリア語やスペイン語やフランス語の元になっていく。こうしたラテン語から派生していった言葉をラテン系と呼ぶことはあるのです。でもラテン語から生まれた言葉を使う地域を一括りにすると広すぎる。ルーマニア語もラテン語系だからダチアもラテン系だし、スペインのセアトもラテン系。こうなると何が何だか分らない。

 さてフランス人。正解を言いましょう。じつはフランス人はイタリア人とは全然関係ない別の民族です。

 今から三千年以上前、いまのフランスの土地にはケルト人という民族が住んでました。彼らは鉄が使えたので強くて、どんどん生息地を広げてイギリスまで渡った。ところが二千年ほど前にローマ帝国がアルプスを越えて侵攻してきた。あのシーザー率いる無双の軍勢だ。これにはケルト人も太刀打ちできずに、フランス地域はローマ帝国の植民地となってしまったのです。なんたって支配者ですから、習慣も話し言葉も影響を受けてフランスにいるケルト人は文化的にはローマ化してしまう。信じる神様もキリストになった。

 ところが紀元4世紀の終わりごろに、いまのドイツのほうに住む人々が束になってフランスにやってきた。世に言うゲルマン民族の大移動だ。ゲルマンは強かった。ローマ帝国までぶっ壊した。フランスを含めて西ヨーロッパのあちこちに、ゲルマンの豪族の国ができた。フランスもフランクと呼ばれるゲルマン族の集団にシメられてしまった。フランク王国の誕生だ。そのフランク王国は、有名なシャルルマーニュ大帝の御世に勢力を広げて西ヨーロッパ全域を支配する。その広大な大国は相続のときに3つに分かれます。東は神聖ローマ帝国で、これはドイツの原型だ。南はイタリアだ。そして西がフランス王国になった。現在のフランスは、土地も住むひとたちも、このフランス王国の末裔なのです。

 というわけだから、フランス人は複雑だ。フランク王国やフランス王国の支配者はゲルマンだ。けれど住んでいるほとんどの人たちはケルト人だ。そのケルト人は文化的にはローマ化してる。ルーツを探ると、かのごとくフランス人はヤヤコシイ基盤を背景にしているのです。

 だが、中世から近世にかけてフランスは、小さな国に分裂しっぱなしだったドイツやイタリアと違って、いち早く中央集権を確立して、欧州ナンバーワン国となった。自動車が生まれたのは、フランス革命からナポレオンの時代を経たころで、このときもフランスは、軍事も文化も技術もイギリスと競って世界トップだった。初めて自動車を作ったのはドイツのベンツさんだったけれど、それを発展させたのはフランスだった。

 そんなフランスも、第二次世界大戦ではナチスドイツにボコられて、最後はアメリカが助っ人に来てくれて勝ったけれど、国はボロボロになった。そこからの復興を目指して、フランスは重要産業を国営化した。ガスも電気も、そして自動車も。ルノーを国営化して、フォルクスワーゲンみたいな実用車を作らせた。国は貧しい贅沢はイカンてんで、排気量が増えると税金が思い切り高くなっていくようにしたから、他のメーカーも、大勢が乗れて荷物もたくさん積める車体を小さなエンジンで走らせる実用車が商売の中心になった。

 近世ナンバーワンの技術の素養を持つ国が、そんな時代を長く過ごしたから、フランスは実用車づくりのプロになった。なんてことない安物グルマに見えて、乗ってみると滋味深い感じがするのは、年季が物を言ってるのだ。

 フランス車は、そんな風に複雑な下地を持っている。ラテン車などと寝言を言って、フェラーリやアルファが生き延びるイタリアといっしょくたにしちゃいけないのです。

PROFILE
モータージャーナリスト 沢村慎太朗
鋭い観察力と感性で論理的かつ叙情的にクルマを語る自動車ジャーナリスト。クルマ人生論の書とも言える『自動車問答』が4月に発売される。

Q&Aでギモンを解消!
まだまだ知りたいフランス車の魅力

今回、さまざまな角度からフランス車の魅力について触れてきましたが、まだまだ語り尽くせない奥深いその世界をここでは疑問に答える形で探ります!

文●GooWORLD

フランス車ってセダンはないの?

新しい508は相当スゴイらしい
PEUGEOT 508 GT
PEUGEOT 508 GT

 フランス車と言うとコンパクトカーのイメージが強いが、たおやかな走りを身に付けた大人のセダンにも定評がある。近く日本にも導入される予定の「プジョー 508GT」はまさにそれを体現するモデルだ。注目は、ディーゼルモデル。ディーゼルエンジンで60年近い歴史を持つプジョーが新たに開発したユニットは、ヨーロッパの最新排ガス規制ユーロ6、日本のポスト新長期規制をクリアする高性能クリーンディーゼルとなる。低燃費と180馬力/40.8kgの力強さで、快適な移動を実現する。

秋口にはディーゼルエンジンもデビュー!!

プレミアムセダンとしての資質は、その懐の深い走りだけでなく、質感の高い室内空間、各部に行きわたるクオリティの高さにも見ることができる。

PEUGEOT 508 GT

PEUGEOT 508 GT

PEUGEOT 508 GT

モータースポーツには積極的?

人気、成績ともに急速に復権
モータースポーツ

 フランスは、国民も自動車メーカーも伝統的にモータースポーツへの関心が大きい国。近年はドイツ勢に押され気味だが、最近の復権ぶりは目覚ましい。プジョーがダカールラリーを制覇、WRX(世界ラリークロス選手権)で活躍し、ルノーは頂点を極めたF1にワークス復帰、シトロエンは世界ツーリングカー選手権(WTCC)でコンストラクターズタイトルを連覇した。

2輪で過去に6回優勝しているフランスのステファン・ペテランセルは、4輪でも6回目となるダカールラリー総合優勝を果たした。

2016 DAKAR
2016 DAKAR

F1
F1

WTCC
WTCC

WRX
WRX

フランス車にスポーツカーはある?

伝説復活で盛り上がる本格スポーツ
アルピーヌ

 パフォーマンスブランドとして「アルピーヌ」の名前を復活させる意向のルノーが、第一弾「アルピーヌ ビジョン」を発表して注目されている。まだデモカーだが、デザイン的にはほとんど市販モデルに近いものとされる。そのフォルムからも伝説の「アルピーヌ A110」へのオマージュであることは明らかだ。

軽量なボディとタイトでレーシーな雰囲気の室内(左)は、伝説の名車「A110」譲り。A110は軽量を生かしてラリーシーンを席巻。1973年にはWRCの初代栄冠に輝く。

室内

ラリーシーン

各ブランドの名前の由来は?

3人の若き情熱家が追いかけた夢

 自動車の可能性に魅せられた3人の若きフランス人は、比類なき情熱によってそれぞれの能力を開花させていった。先陣を切るプジョーに続き、ルノー、シトロエンも、自動車の量産化にこぎつける。彼らは自動車の黎明期に躍動し、いずれも世界的な自動車メーカーを創り上げていった。今日も、創業者である彼らの名前は誇らしげに掲げられているのである。

LOUIS RENAULT
LOUIS RENAULT

ANDRE CITROEN
ANDRE CITROEN

ARMAND PEUGEOT
ARMAND PEUGEOT

機械いじりが好きな少年だったルイ・ルノーは、若くして自動車を製作して脚光を浴びた。オランダから家族とともにフランスに移住したアンドレ・シトロエンは、大衆車を大量生産することで1930年頃にはフランス最大のメーカーに成長した。プジョーはダイムラー・ベンツよりも4年早く、量産化に漕ぎつけた。

どうしておしゃれなイメージなの?

それを選んだひとの魅力を引き出す名脇役
おしゃれなイメージ

 60年代、70年代、80年代から今日に至るまで、「フランスのクルマ」といえば、どことなくおしゃれなイメージがあるのは事実だ。それは、クルマ自体が、自らの存在を主張しすぎるのではなく、あくまでユーザー(主人)の生活を便利に、楽しくなるようにサポートするという脇役、引き立て役に徹しているから。そう、フランス車がおしゃれ、と言うよりは、それに乗っているユーザーが、洗練された大人に映るのである。

性能はどうなの?

エコとパフォーマンスを両立

 プジョーが開発し、多くのモデルに搭載する「PureTech(ピュアテック)1.2Lターボエンジン」が、低燃費かつハイパワーであることが高く評価され、「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー2015」を受賞した。

PureTech(ピュアテック)1.2Lターボエンジン

インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー2015

日産とルノーの仲はいいの?

提携関係は一層強固なものに

 1999年に提携したルノーと日産はその後も着実に結束を強め、シナジー効果を発揮している。それを象徴するのが、フランス北西部のサンドヴィル工場で、日産の次世代軽商用車「NV300」が生産されるという最近のニュースだ。

ルノーと日産

フランス北西部のサンドヴィル工場

ルノー カングーって本国では売れてるの?

現行モデルは幅広く人気
100万台目のカングー

 2007年にデビューした現行型の2代目カングーの生産が累計で100万台に到達した。本国およびヨーロッパでは、もっぱら商用車としても活躍した初代カングーは、2代目になり、一般ユーザーからも人気を集めている。なお、記念すべき100万台目のカングーは、日本のユーザーに納車される予定という。

カングーが生産される工場

カングーが生産される工場は、フランス自動車産業の重要拠点のひとつモブージュ。フランス北部に位置し、日本のトヨタなども工場を持つ。

フランス車の品質はホントの話どうなの?

世界のトップレベルに
フランス車の品質

 クオリティの高さといえば、国産車やドイツ車が知られているが、フランス車の生産クオリティはとくに近年急速に向上している。ユーロNCAPでは、軒並みにドイツ車を上まわる衝突安全性能を誇り、ヨーロッパではドイツブランドの強敵たちと互角に渡り合い、ドイツでも好調な販売台数を記録している。

生産ラインも最新設備

フランス本国はもちろん、スペインをはじめとするヨーロッパ、さらには南米などの生産ラインも最新設備を誇り、生産効率、組み立て精度で世界のトップレベルにある。

もっとコンパクトなモデルはある?

日本での導入が待たれる
RENAULT TWINGO
RENAULT TWINGO

 多くのフランス車ファンが注目するのが、この3代目「ルノー トゥインゴ」だ。ヨーロッパではすでに人気モデルとしてパリやローマの街で多く見かける。メカニズムはメルセデスのスマートと共有のRR。デザインは、往年の大ヒットモデル「ルノー 5」からもインスピレーションを受けたという。

多彩なカラーバリエーション、オープンルーフ、そして可愛いインテリア、どれをとっても個性的だ。

多彩なカラーバリエーション

可愛いインテリア

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