車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2018.11.20 / 掲載日:2017.09.28

第2回目 BMW全方位

BMW

 BMWの根幹をなす車種といえば、やはり3シリーズだろう。前述したようなBMWらしい乗り味がもっとも色濃く反映されたモデルであり、とくにワインディングロードなどでの走りではコンパクトゆえに一体感の高さが際立っている。

 5シリーズ、7シリーズと大きくなると、俊敏性よりも快適性や質の高さに重点が移る。だが、ライバルに比べればボディの大きさを感じさせない軽快感があるのはBMWならでは。質の高さ、洗練性という点では開発時期にも関連があり、最新の5シリーズは驚くほどの高みにある。

 3/5/7シリーズという伝統的なサルーンの間に位置する4シリーズと6シリーズは、クーペとして一層のスポーティさと優雅なデザインが持ち味。3シリーズと4シリーズを乗り比べると、その差は大きくはないが、ボディのしっかり感やハンドリングのシャープさが上まわっているのがたしかに感じられ、あえてクーペを選択する意義は実感できる。

 1シリーズはCセグメント唯一のFRとして貴重な存在。エントリーモデルではあるが、動きの質が下がるなんてことはない。2シリーズのクーペはコンパクトでスポーティなFRの理想形の一つ。カブリオレは活発な女性などにも人気のモデルだ。

 SUVのXシリーズも、最新モデルたちはスポーティさとコンフォート性能の両立がなされるようになった。初代X5やX3あたりは、セダン系と変わらないハンドリングのよさはあったが乗り心地が硬かった。嵩張る重量や高い重心がモロに影響していたのだが、ボディの軽量・高剛性化を始めとする技術の進歩によってバランスがとれるようになったのだ。2000年代に入ってからのBMWは、ボディの進化が著しいが、それがもっとも実感できるのがじつはXシリーズのコンフォート性能の向上だろう。現在は燃費もクルマ選びの重要なファクターであり、X3やX5ではディーゼルが大人気。トルクフルな特性もSUV向きだ。

 ここ数年でのBMWのハードウエア上の大きなトピックスが2シリーズ・アクティブツアラー/グランツアラー、X1などFFベースのモデルをリリースしたことだ。当初はBMWファンからは憂いの声も聞かれたが、実際に乗ってみれば、それも吹き飛ばされてしまう。重量配分はややフロントヘビーとなるが、徹底的に造りこんでFRのBMWに驚くほど近いステアリングフィールを実現。ハンドリング性能も、少なくとも公道ではFFのネガを感じさせず、駆け抜ける歓びがあるからだ。

 2シーター・スポーツ・クーペのZ4は、コンパクトなFRの走りをもっとも濃厚に楽しめるモデル。次期型の噂が聞こえているが、性能は大きく向上するはずなので楽しみだ。

 走りの性能を徹底的に磨いたBMW Mと、電動系のBMW iはサブブランド。それぞれエフィシェント側とダイナミクス側に大きく寄せたものであり、スタンダードとの中間にMスポーツとiパフォーマンス(PHEV)が存在している。

BMWブランドの足跡に触れられるミュージアム

誕生以来、革新性を追い求めるBMWブランドの足跡に触れられるミュージアムには、歴代のモデルやエンジンが誇らしげに展示。

  • 自動車ジャーナリスト 石井 昌道

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    自動車ジャーナリスト 石井 昌道

    ●日々、ニューモデルのテストドライブを精力的に行う自動車ジャーナリスト。専門誌はもちろん、一般誌でも大人気だ。

  • 自動車ジャーナリスト 石井 昌道

BMW NEW CAR LINE-UP 4 4 Series Coupe/Cabriolet

  • ダイナミック性能を極める ハンドリングマシーン

    4シリーズ クーペ/カブリオレ

    4シリーズ クーペ/カブリオレ

  • ダイナミック性能を極める ハンドリングマシーン

     50対50の前後重量配分、極めて低い車両重心位置、専用サスペンション。2013年に登場して瞬く間に、BMWのスポーティレンジとしての地位を確固たるものとした4シリーズ。2016年、出力アップと燃費ダウンを実現した新世代のモジュラーエンジンにすべて切り替えられ、2017年にはマイナーチェンジして、より力強さを増したルックスとなっている。

4シリーズ クーペ/カブリオレ

BMW 440i クーペ ラグジュアリー(8速AT)

全長×全幅×全高4640×1825×1375mm
車両重量1680kg
エンジン直6DOHCターボ
総排気量2997cc
最高出力326ps/5500rpm
最大トルク45.9kg m/1380-5000rpm
サスペンション前/後ストラット/5リンク
新車価格573万円~851万円(Mモデルを除く全グレード)

BMW NEW CAR LINE-UP 5 1 Series

  • BMWらしさが凝縮された ベストコンパクトモデル

    1シリーズ

    1シリーズ

  • BMWらしさが凝縮された ベストコンパクトモデル

     初代に続いて後輪駆動方式を採用し、軒並み前輪駆動のライバルモデルと一線を画するハイレベルなパフォーマンスを見せるコンパクトハッチバック。2016年11月、「120i」に直噴システム、ツインスクロールターボバルブトロニック、ダブルVANOSなどが組み合わせられた新世代エンジンが採用され、パワー、燃費ともに向上するなど魅力を高めている。

1シリーズ

BMW 120i Mスポーツ(8速AT)

全長×全幅×全高4340×1765×1430mm
車両重量1500kg
エンジン直4DOHCターボ
総排気量1998cc
最高出力184ps/5000rpm
最大トルク27.5kg m/1350-4600rpm
サスペンション前/後ストラット/5リンク
新車価格310万円~433万円(Mモデルを除く全グレード)

BMW NEW CAR LINE-UP 6 X1

  • 大幅なグレードアップで FF化の大英断も高評価

    X1

    X1

  • 大幅なグレードアップで FF化の大英断も高評価

     BMWのSUVでもっともコンパクトなX1シリーズは、現行の2代目で、FFをベースとする大英断が行われた。横置きエンジンとなり、室内スペースの効率性が改善されたので、ファミリーユースにも十分対応できる「ゆとり」を身につけている。また、内外装ともに大幅な質感のアップが顕著で、満足感も高いだろう。4WDはオンデマンド式で、FFモデルも設定。

X1

BMW X1 xDrive 25i Mスポーツ(8速AT)

全長×全幅×全高4455×1820×1600mm
車両重量1660kg
エンジン直4DOHCターボ
総排気量1998cc
最高出力231ps/5000rpm
最大トルク35.7kg m/1250-4500rpm
サスペンション前/後ストラット/マルチリンク
新車価格405万円~614万円(Mモデルを除く全グレード)

BMW NEW CAR LINE-UP 7 3 Series Gran Turismo

  • 意外性が大きな魅力の5ドアハッチバックモデル

    3シリーズ グランツーリスモ

    3シリーズ グランツーリスモ

  • 意外性が大きな魅力の5ドアハッチバックモデル

     クーペのような流麗なスタイルの5ドアモデルが、3シリーズ グランツーリスモだ。しかし、ルックスだけでなく、3シリーズのセダンやツーリングよりも大きなボディサイズ、ホイールベースなどにより、意外ともいえるユーティリティの高さを誇り、高い人気を集めている。大きく開くリヤハッチも抜群の使い勝手で、これまでにないスタイルのモデルだ。

3シリーズ グランツーリスモ

BMW 320d xDrive グランツーリスモ Mスポーツ(8速AT)

全長×全幅×全高4855×1830×1510mm
車両重量1800kg
エンジン直4DOHCディーゼルターボ
総排気量1995cc
最高出力190ps/4000rpm
最大トルク40.8kg m/1750-2500rpm
サスペンション前/後ストラット/5リンク
新車価格645万円~706万円(全グレード)

この記事の目次

BMW 永遠のM

  • 永遠のM

  • 大胆な発想と緻密な計算、精巧な技術によって生み出される高性能モデル。BMWの「M」に我々が抱く、そんなクールなメカのイメージとは大きく異なり、真実は、情熱にかられた職人たちが作る、非常に人間臭い「機械」なのであった。

    文●沢村慎太朗、GooWORLD
    写真●GooWORLD、BMW

超高性能モデルは熱い親爺たちが作る

 BMWは1972年に競技部門を独立させてMotorsportGmbHを設立した。この有限会社は1993年にM GmbHに改称されていまに至る。長らく競合してきたベンツがAMGを買収したのも、21世紀に入ってBMWを的にかけてのし上がってきたアウディがクワトロGmbH(現在はアウディ・スポーツGmbH)を増設したのも、これに倣ってのことである。

 BMWがそうしたのは、販売PRとして恰好の場だった欧州ツーリングカー選手権においてライバルとの戦いが熾烈になってきたからだった。市販車開発部門が片手間に競技車両を仕立てているくらいじゃレースに勝てなくなっていたのだ。そこでBMWは若きエンジン設計のエースだったパウル・ロシェを開発現場の長としてそこに送り込んだ。それだけじゃない。前年の覇者ドイツ・フォードのチーム監督ヨッヘン・ニアパッシュを引き抜いて社のトップに据えた。レースは技術開発の場だとか社員教育のためだとかキレイごとなんぞ言わずに、戦う以上はひたすら敵を屠ろうとする欧州人のある種の獰猛さを象徴する話である。

 こんな血の気の多さを物語るように、ニアパッシュは闘いの場をメイクス世界選手権に移してポルシェに挑み、そのための武器としてランボルギーニに依頼してかのM1を作った。秘かにF1参戦まで考えてツーリングカー競技車に乗せていた直4ターボをロシェに改良させていた。

 こういう手練れの親爺たちをレースだけで遊ばせておくのはもったいないとBMW首脳陣は、彼らに市販用のセダンを改造して高性能化したモデルを仕立てさせることにした。こうして79年からはじまる「M」ではじまる謹製モデルの歴史がはじまった。

 ニアパッシュが去ったあとはロシェが親分となり、80年代には待望のF1エンジン供給を始め、83年にはネルソン・ピケを世界王者にした。このときのチームはブラバム。そのとき車体設計者ゴードン・マーレイがマクラーレンF1を開発するときに頼ったのがロシェだった。マーレイは載せるV12の供給元としてアテにしていたホンダにあっさり断られて途方に暮れていた。それを知ったロシェは「なんならウチで作ってやるぜ」と請け合った。そしてBMWの量産V12を下敷きにしたとはいえ、たった4カ月でこれを初号機のベンチテストまで漕ぎつけて、マーレイの要望どおり500馬力オーバーを軽々と叩き出してみせた。

 このころのロシェの武勇伝はほかにもある。FIAは82年シーズンから競技車両の規定を変えた。売ってるクルマに近いから人気のあった市販改造車レースはグループA。かつてその戦域でならしたBMW首脳陣は参戦を決意する。そして社長はロシェを呼んで「E30系3シリーズで直4を載せた競技車両を仕立てろ、既定された生産台数をクリアするためにすぐに生産に入りたい。可及的速やかに開発を完了すべし」と命じた。命を受けたロシェは、これから直4を設計している暇はないからM5の直6を直4に改変することにした。図面を引き直したのではない。工房に転がっていたM635の直6を作業台に据えて金鋸でブロックの1/3を切り落としたのだ。なんという無頼。なんという現場主義。だが、その男らしいやり口のおかげで競技車両M3は、たったの2週間で完成した。あくる日は土曜日。だがロシェは完成したM3初号機を駆って社長の自宅に乗りつけた。できたぜ。文句あっか!社長も豪傑であった。切った張ったで即席仕上げの初号機にやおら乗り込むと近所を一周。そして待ち構えていたロシェに言った。「いい出来だ。よかろう。これで行こう」。初代M3はグループAで大暴れしてレース史に名を刻んだが、その伝説はじつはこの世に生を受けるときからはじまっていたのだった。

 ロシェが引退して時代が21世紀を迎えても、M社は依然として往時の腕前と血気を保っている。ウイリアムズF1にV10を供給し、同じ形式の市販車用ユニットを開発してM5に載せた。ターボ全盛のいまは通常品とは別設計の過給エンジンを作る。

 拡大を続けるBMWは、マーケ部門がMの冠を乱発してさまざまなモデルに増設している。だがMの文字が後ろに来るクルマでなく、前モデルだけが真の謹製車だ。いまだに手練れ親爺が揃うM GmbHは、BMW本社設計が売りにするランフラットも後輪操舵も鼻で笑ってうっちゃって、M3やM5を開発した。自分たちが信じる最速のBMWを生み出すために。出来あがったクルマは猛烈に速く、そして往年のBMWの健やかさを横溢させていた。もっとも速いと同時に、もっとも美味なBMW。それがM謹製のクルマたちなのだ。

 株主が焚きつけるからでも、社長が恰好つけるためでも、マーケ屋に指図されたからでもない。M社の親爺たちがクルマの真髄を深くわきまえた百戦錬磨で血気盛んな頑固野郎だから、M3やM5はああいう素晴らしい高性能セダンになった。次期M5やM3は日産GTーRに触発されたのか、4WDになるのではという噂が聴こえてくる。Mの頑固親爺たちが健在なら、そうはならないだろう。万が一そうなっても、素晴らしく味わいよく猛烈に速いだろう。

 M GmbH。それは単なる子会社ではない。私たちがBMWに見る夢を紡いでくれる希望の星なのだ。

Profile
自動車ジャーナリスト 沢村慎太朗

●研ぎ澄まされた感性と鋭い観察力、さらに徹底的なメカニズム分析によりクルマを論理的に、そしてときに叙情的に語る自動車ジャーナリスト。

「M」を代表するモデル

スポーツクーペ「M635CSi(1983年、左)」とスーパーカー「M1(1978年、中央と右)」。ともに「M」を代表するモデルで、伝説的な存在となっている。

The Spirit of M

The Spirit of M

F1、DTM、つねにハイレベルなレースシーンに身を置き、獲得した技術と経験をフィードバックし続けるBMW M。高次元のパフォーマンスで、世界中から支持されるプレミアムブランドBMWにとって、Mはまさに「走り」の真髄ともいえる存在だ。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

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