206や207には「SW」と名乗るモデルがあったが、208を母体とするユーティリティモデルはちょっと趣向が違う。4桁車名を持つことからもわかるように、「コンパクト・アーバンクロスオーバー」をコンセプトとする2008は、スペシャルティ感をより高めている。
とはいえ、駆動方式はFFのままだから、クロスオーバーといっても走破性やタフさで勝負をするわけではない。ゆえに、「なんちゃってSUV」とナメてかかる人もいるだろうが、じつはBセクメントで4駆を用意するのは日本車ぐらいのもの。
200mm拡大した全長を活かす余裕あるラゲッジと、高めの目線が生む開放感の高いドライビング感覚だけをとっても、2008には平凡なコンパクトハッチにはない魅力がある。いまのブームの火付け役は日産ジュークだが、2008のムードはグッと大人っぽく、クオリティ面でも確実な差をつけている。
しかし、走りの面では心配な要素もある。ボディの大型化により、208比で車重が50kgほど増しているのに、心臓は82馬力/12.0kg mの3気筒1.2Lだけの設定なのだ。そしてミッションは、最新208でも話題のETG5を組み合わせる。
でも、心配は杞憂だった。発進の瞬間から、2008の走りは十分に軽やかで、右足に力を込めればストレスなくスピードを高めていく。高速のハイペース走行もなんなくこなし、急勾配で知られる箱根ターンパークもいいペースを維持したまま登り切ってしまったのだから、動力性能は「これで十分」と言える。
特筆すべきは、バランサーシャフトを内蔵する3気筒EB2ユニットの素性のよさ。小排気量のNAエンジンだから、当然中高回転域まで引っ張る場面もあるが、5000回転を超えても3気筒にありがちな荒っぽい振動や騒音とは無縁でいられる。むしろ、独特のビート感や軽快な音色のサウンドが、走りの快感を高める魅力になっているほどだ。
ETG5はシングルクラッチ式だから、DCTほどの変速のスムーズさや早さは求められないが、自動シフトアップでのつんのめり感も許せる範囲。スタート&ストップ機構の出来もよく、トータルとしてうまくパワートレーンをまとめている。
エンジンは3気筒、ミッションはAMT、そしてスタート&ストップ機構付きというと、エコに特化したモデルと思うかもしれないが、走りの楽しさも忘れてはいない。それがプジョーらしいところだ。
走りにこだわる姿勢は、クロスオーバーのネガを感じさせないフットワークにも表現されている。小径ステアリングを切ると、2008はクイックに反応。切り返しの場面でも応答遅れは気にならず、ハイペース走行に至るまで軽快かつ正確なハンドリングを楽しませてくれるのだから、たいしたヤツと言っていい。
しかも、乗り心地面でもプジョーへの期待を裏切らない。サスは自然なストローク感を特徴とするもので、無粋なゴツつきを遮断し、ヒョコヒョコと落ち着きのない上下動もしっかりと抑え込んでいる。優れた操縦安定性と上質な乗り心地をバランスさせる秘密は、路面をなめるような高い接地性。違和感のない電動パワステの反力設定も褒められる。
そんな2008のグレードは2タイプ。プレミアムも十分な装備内容だが、上級のシエロはパノラミックガラスルーフやアルカンタラ/テップレザーシート、テップレザーダッシュボードバンドなども標準。フレンチSUVらしいおしゃれさにこだわるなら、お薦めはシエロとなる。
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