モデルチェンジというと、ユーザーは新型に「新しさ」を求めるもの。でも、MINIのファンがなにより重視するのは……そう「MINIらしさ」。MINIの開発陣は、そうしたファンの心理をよく心得ている。
7年ぶりの全面変更を実施して登場した新型は、BMWがMINIを手がけるようになって3代目のモデルだが、今回も内外装は「MINIの文法」に忠実にデザインされている。しかしながら、プラットフォームからの一新だけに、注目すべき変化点が数多く見受けられる。
まずはパッケージ。新型は全長を95mm、全幅を40mm拡大した。ついに全幅は1.7mを超え、全車が「3ナンバー」となったのだ。最小回転半径は先代と5cmしか変わらないため、実質の取りまわし性に大きな変化はないのだが、「MINIも大きくなったものだ」という印象を抱く。
もうひとつの象徴的な変化はエンジン。BMW&MINIは、「1シリンダー500cc」の設計を基本とする新世代ユニットを柱に据える計画だが、新型MINIクーパーの心臓もその路線に沿った展開となった。クーパーが積むのは3気筒1.5L、クーパーSが積むのは4気筒2Lで、どちらも「ツインパワーターボ」と称する直噴ターボの技術を採用する。
気になるのは性能だが、1.6Lから2Lへと拡大されたクーパーS用ユニットは、先代を8馬力/4kgm上まわる192馬力/28.5kgmを発生する。印象的なのはトルクの太さで、1250〜4600回転というトルクピークの値が示すように、どこから踏んでも強力なダッシュを決める。
ただし、メリハリがあった先代の加速フィールと比べると、刺激性が薄れた印象も……。扱いやすさやゆとりを増強した代わりに、ホットハッチの心臓らしい「キターッ!」というドラマチックさは少し犠牲になった感じ。それが2L化の功罪だが、「乗りやすくて速い」のだから、多くのファンが歓迎することだろう。
なにしろ、SPORTモードを選択すれば、エンジンはより活気づき、オーバーブースト時にはなんと30.6kgmのトルクを生むのだから、「もっと刺激がほしい」というケースは希なはず。滑らかな回転フィールや高度なクルージングの静粛性も光るところで、全体に走りの質感をレベルアップさせている。
なら、ハンドリングの実力は?プラットフォーム一新にともなってホイールベースやトレッドを拡大し、サス設計を見直した新型は、基本からシャシー性能を引き上げている。加えて、新たに導入した電制ダンパー採用のダイナミックダンパーコントロール(オプション)も、期待どおりの効果を発揮している。
多くのファンがクーパーSに求めるのは、伝統の「ゴーカートフィーリング」だろうが、新型もフットワークの切れ味は鋭い。足が硬めのセットとなり、操舵力が重くなるSPORTモードではムダな動きがさらに減少し、よりダイレクト感のあるハンドリングを楽しませてくれる。
だが、ペースをどんどん上げていくと、ノーズヘビーを意識する場面も出てくる。また、試乗車が履いていたハンコック製の17インチランフラットタイヤ(標準設定は16インチ)は、剛性感とグリップレベルがややもの足りない印象だった。
ということで、ハンドリングには熟成の余地がありそう。でも、乗り心地に関しては、手放しで進化を歓迎する人が多いはず。低速域においてもゴツつきを抑えることで、新型は快適な乗り味を実現している。「走りも、快適性も」が望みなら、ぜひダンパーコントロールを選択したい。
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