アメリカを代表する「ジープ」だが、ご存知のようにすでに純血主義ではなくなっている。98年以降ジープブランドを持つクライスラーグループはダイムラー社に統合されてきた。よって現在のグランドチェロキーはドイツ技術がふんだんに注がれている。具体的にはメルセデス・ベンツMクラスのノウハウだ。
そして、現在このグループはイタリアのフィアットグループに入っている。リーマンショックからの再建計画が終わると、彼らはスッと手を差し伸べたのだ。
そこで生まれたのがこのチェロキー。具体的にはアルファロメオ・ジュリエッタのフレームを使ってつくられた。なので、「チェロキー」と名付けられるものの歴代モデルとの関連性はない。これまでのモノコックとラダーを融合させたユニフレーム構造はもちろん、パワートレーン、インテリアデザインまで関係性は皆無。共通するのはジープのなかでのポジショニングぐらいだ。
もっといえば、アメリカでは2世代前のKJ型チェロキーから名前をリバティに変えていた。その意味では久々のオールドネーム復活となる。きっと決めたのはチェロキーの名をそのまま続けていたヨーロッパの首脳陣だろう。日本同様この名は極めてポピュラーなのである。
実際に、アメリカでの販売は好評。昨年11月に発売開始されると、毎月1万台以上のセールスを記録し続けている。コンパスとラングラーアンリミテッドの中間ということで、裾野は広いようだ。
ではその特徴だが、まずデザインが取り上げられる。言ってしまえばイタリアンテイストで仕上がった。ジープのアイコンである7スロットグリルは持つものの、その他の部分はヨーロピアンデザイン。LEDを使った切れ長のライトなどは、保守的なジープデザイナーのアイデアとは思えない。インテリアもそう。ダッシュパネルはまんま乗用車的で、ジュリエッタを思い起こす。よって、ラングラーに見られる「無骨な」イメージをこのクルマに求めてはダメ。そうではないグローバルなデザイン性がここにある。
そしてその恩恵は、オンロードの走りにそのまま反映された。採用されたモノコックボディが快適な走行性能を実現する。ここが新型の最大の特徴だろう。歴代モデルをすべて試乗してきたが、それらとは別モノ。乗り心地だけで評価すれば同じモノコックのコンパスやパトリオットもいいが、こいつはその上。グランドチェロキーに迫る質感だ。
グレードは3種類でエンジンは2種類。ロンジチュード/トレイルホーク/リミテッドで、ロンジチュードに2.4L直4が、それ以外に3.2L V6が搭載される。トランスミッションはどれも9速ATで、ZF製のこれはイヴォークにも積まれるいまもっとも多段化されたFWD用ギヤボックスとなる。
興味深いのは直4エンジン。フィアットパワートレーンが開発したマルチエア2が採用された。吸気を精緻にコントロールするこの仕組みはフィアット500にも使われる技術の進化版となる。
ということで、新パワートレーンが快適な乗り心地にスムーズなドライビングを演出してくれる。パワーは直4で十分だし、9速のギヤはシームレスで変速ショックは皆無ともとれた。それに省燃費も期待できそうだ。またワンディングではコーナリング中ロールは抑えられ挙動は安定したまま。もはやジープは特殊でマニアックな乗り物ではない。そう思わせる出来映えである。
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