ご覧いただきたい。スーパーカーである。流れるようなボディに厳ついマスク。ボタンひとつで大きなウイングが出てきて、そのまま空へ飛んで行く様が目に浮かぶ。
そんなスタイリングに仕上がったのは空力を考慮したからだ。彼らは2000年から本格的にレース参戦し、それを市販車に反映してきた。エアロダイナミクスと軽量化はその最たるものだろう。先代のC6もまたそんな状況下で生まれたモデルだ。ル・マン24時間レースを“走る実験室”とし、その経験を取り入れた。その意味ではC7はその延長線上にある。というか、C6では出来なかった領域をこいつで実現した。
進化したエアロダイナミクスは、ダウンフォースを稼ぐばかりか、冷却効果も持ち合わせる。たとえばフロントのアンダーグリルから取り入れた空気は一度ラジエーターに取り込まれ、その後エンジンフード中央のベントから上へ向かって排出される。つまりこれは、ダウンフォースと冷却を同時に行うというものだ。また、サイドベントはフロントブレーキを、リヤクォーターパネル上部のベントはトランスアクスルを冷却する。高性能になった分、熱処理に重点が置かれた。
そして出来上がったのがこのスーパーカーのようなフォルム。ロングノーズ&ショートデッキは継承され、FRスポーツらしさを醸し出す。ただ一部伝統のデザインが消えてしまったのは残念。ラウンドしていたリヤガラスや丸型のテールランプをC7は装備しない。ボディ剛性を少しでも上げるためリヤガラスを小さくしたのだろう。テールランプは……新しさを求めた結果か。
それではパワートレーンに話を進めよう。エンジンはLT1と呼ばれる6.2L V8が積まれる。最高出力は460馬力。うれしいのは伝統のOHVとなる点だ。C6もそうであったが、毎回ここはツインカム化が議論される。が、今回も伝統の味が残された。また、LT1という呼称もファンには喜ばしい。C4時代のそれを思い出させるからだ。オールドネームの復活である。ただし、当然のこと中身は別モノ。今回は直噴化され、可変バルブタイミングも装備した。また運転状況で4つのシリンダーを休止するシステムも稼働する。
そして組み合わされるギヤボックスは6速ATと7速MTという設定。従来のようなトランスアクスル方式で前後のバランスをとっている。
グレードはスタンダードとZ51という設定。後者はエンジンをドライサンプ化したり専用のエキゾーストシステムを装備する。それにパワーも6馬力上げファイナルギヤレシオも変更した。もちろん、ダンパーを含めサスペンションも異なる。
さて試乗だが、ハンドルを握ったのはC7のスタンダードモデルだった。サーキットでのテストは用意されなかったのが残念だが、街中とワインディングを走ることはできた。
印象はかなり乗りやすいといったものだった。乗り心地はよく、操作系もきわめて扱いやすい。アクセルワークもそれほどシビアには感じられなかった。ただ、有り余るパワーは底知れず、どこまでも加速する状態に驚きは隠せない。これまでもコルベットの試乗は何度も行っているが、このパワーは絶大だ。と同時にクルマのバランスがいいのか安定感も強く感じられる。ただ、パワーだけがすごいのではなく、クルマとしての完成度も相当高そうだ。それにブレーキパワーは呆れるほどすごい。これならアクセルを遠慮なく踏める。いやはやこのスーパーカー、かなりいい仕上がりである。
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