ダークスーツを着たクールな男、フランク・マーティンが活躍する映画といえば「トランスポーター」。血中ガソリン濃度が高い人物が指揮する作品だけに、クルマ好きにはもってこいの1本といえる。その、シリーズ第2弾と第3弾で登場するのがアウディA8。フランクの過激なドラテクを許容するハイパフォーマンス・サルーンがソレだ。
ここで紹介するのはその3代目となる新型A8である。特徴は、写真を見ていただくとわかるように個性的なマスク。ヘッドライトユニットには、R8並みに用意されたLEDが近未来カーのごとくきれいに陳列する。暗闇に浮かぶLEDの光は、まさにいまのアウディブランドを象徴する。つまり、この迫力はどのブランドにも負けてはいない。
それ以外の外装部分は、ディメンションは変わりながらもキープコンセプトといえる。フルサイズサルーンはコンサバなマーケットだけに奇をてらった仕掛けはないようだ。その意味じゃ変化球好きな方はもうすぐリリースされるA7の方に。個性的なテールエンドがグッとハートを掴むはずだ……。
それはともかく、キープコンセプトなら中身も従来型を継承かといえばそうではない。お馴染みアルミ合金製のASF(アウディ・スペース・フレーム)もこれを機に3世代目へ突入した。具体的には、Bピラー付近に初めて高張力鋼板を組み込む。結果、ボディ剛性は従来比で25%、軽量化もスチールボディ比で約40%の向上を実現した。それにしてもアルミ加工の第一人者アルコア社を巻き込んでのASFは、いったいどこまで進化するのだろうか。
エンジンは3L V6と4.2L V8。前者はスーパーチャージャーと組み合わされるTFSIで最高出力は290馬力、後者は自然吸気のFSIで372馬力を発揮。ともに直噴式でミリ単位まで正確に燃焼室へ燃料を噴霧するのが特徴。燃焼効率を上げパワーと省燃費を両立する。
組み合わされるギヤボックスはなんと8速のティプトロニック。もちろん、8番目のギヤはオーバードライブ的なもので、優れた燃費データを導くのが役目となる。だが、あるとないとじゃ大きな差。とくに排気量が大きいほど恩恵はありそうだ。
では、実際に走らすとどうかといえば、ここで前述したASFの効果が大きく現れる。エンジンの大小に関わらず、クルマ自体の遮音性が極めて高いのだ。もちろん、高級サルーンなのだから当然ではあるが、これまで以上なのはたしか。窓を開けたとき、ワッと車内に飛び込んでくる喧騒の大きさが気になったほどだ。それと振動の少なさも際立つ。今回はロングホイールベースのA8Lに試乗していないが、スタンダードサイズでもこの上ないフラットな乗り心地を得た。この辺はアダプティブエアサスペンションの成果だろう。連続的に減衰圧を無段階コントロールし車体を安定させる。
エンジンはV6で十分な手ごたえを得た。スーパーチャージャーが低回転域から太いトルクを発生させるため、出だしからグイッと走り出す。そしてワインディングでは鼻先が軽く感じられ、コーナリングを楽しく走れた。高級サルーンとしての要素はV8がすべてを備えるが、V6も侮れないのを覚えていてほしい。
A8に触れる機会があれば、とくにインテリアの細部に触れてみることをお薦めする。最先端テクノロジーと上質なレザーとが共存する世界こそ、このクルマの得意とするところ。フラッグシップモデルならではの演出は乗員を飽きさせない。
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