本国のオーナーに聞いた
好きなクルマは「素」がベスト!?
高級車のほとんどが欧州生まれといっても過言ではない今日の日本・・・・・・
ところで、本国ヨーロッパの人たちにとって「ベーシック」とは?
街角で出会ったオーナーたちに彼らの考え方を率直に聞いてみました!
文●GooWORLD
欧州車を鍛えてきた 彼らの「ベーシック愛」
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●パリ、カルチェラタンの路駐風景。ここでも目立つのは、やはりベーシックグレード。メルセデスもほぼ「素」の状態。
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フル装備……。新車に加え、中古車物件でも頻繁に使われるこの言葉。もはや我々にとってはさほど関心を引くものではありません。
でも、所変われば変わるもの。ヨーロッパに行ってみると、この「フル装備」という言葉が突如として輝きだします。それは今でも、まさしく「豪華、贅沢装備」を意味するのです。
エアコンが装備されだしたのもそれほど前ではないというヨーロッパは、たとえ高級車であっても、必ずしもレザーシートが装着されているわけではないという土地柄。「クルマのなかに住むわけじゃないんだから、なにもシートを革にしたり、すごいオーディオ組んでDVD観たりする必要もないよ……」
こういった意見も少なくない。実際、ドイツなどを除いて、購入したクルマに多額のお金が注ぎ込まれることは珍しいのです。デザインの凝った高価なアルミホイールが装着されることもほとんどありません。
ただそのため、ヨーロッパでは中古車市場での豪華装備車は少数で、その価格はけっこう高め。日本の中古車市場で時折、8気筒エンジンを積んだ上級グレードよりも、6気筒のベーシックグレードのほうが高いことがありますが、これはその後の維持費が安く済むからという理由からです。ヨーロッパではあまり見られない現象です。
中古車でも上級グレードが単純に高いのです。これは税金の高いヨーロッパで上級グレードを選べるのが明らかに富裕層というのがひとつ。また、日本と異なる気候で熱害が少ないということも一因なのかもしれません。いずれにしても、それら上級グレードの中古車は、「とても大切に整備・保管されてきた」と考えられます。ベーシックカーを評価する彼らにしてみれば意外な傾向ですが、それもまた事実。
とはいえ、それが「中古車では上級グレードや豪華装備車の人気がある」を意味するものではありません。裏を返せば、いかに圧倒的に多くのベーシックカーが購入されているかの証明となるのです。「べつに装備でクルマを決めるのではなく、デザインや走りがよければそれでいい……」
彼らから話を聴けば聞くほど、ヨーロッパの人たちがいかに「クルマの本質を見極めているか」、そしてなぜ欧州車が魅力的なのか、が理解できる気がしてきます。
毎日、気兼ねなく乗れて
自分らしくいられる それこそが「ベーシック」
「新しいクルマとかいいなあと思うけど、長く乗っていると馴染んじゃって手放せないのよ……ハンドル重くてオートマじゃないけど、まだ走るから」■マロリー・プラデル(63才・女性・主婦)
「シンプルで働き者のクルマが好きだな。長いことゴルフUに乗って、その後Vも乗ったんだけど、それからはなかなか気に入ったのがなくて……あまり走っていないゴルフUをまた買ったよ(笑)」■フレデリック・ブラン(48才・男性・獣医)
「代車で豪華装備のラグナを出してもらってたんだけれど、整備に出していたクリオ(ルーテシア)の方が乗っていて楽しいですよ!」■エマニュエル・シャン(32才・女性・教師)
「やっぱりどのメーカーであっても、いちばん売れているようなモデルはよくできていると思うよ。それこそが“ベーシック”でしょう」■ディディエ・オビスポ(27才・男性・銀行員)
車検制度がなかったり、日本と比べて基準が寛容な国が多いことから、ヨーロッパではかなり年式の古いクルマを数多く目撃します。
さらに地方に行くと、親子2世代で「ベーシックカー」を大事に乗り継いでいるような例も見かけます。クルマに対する要求と期待が多岐に及ぶ日本とは違って、ヨーロッパでは純粋な「移動手段」としての色合いが濃いのです。素行距離10万km超も普通。そう、走るかぎりは乗り続けようとする考えが広く一般に浸透しているのです。
「レンジローバーとポロを持っていますが、出かけたときにレンジでは駐車することが難しいので、ほとんどポロに乗ってます(笑)」■セバスチャン・ウリエ(46才・男性・TV制作)
路上駐車が主流で、車両盗難や車上荒らしが多いヨーロッパの都市部。そこでは日本のように高級車を堂々と乗り回すことは、それなりのリスクを伴うことになります。「ベーシック」はまた、そういった社会状況の“必然”でもあるのです。
「結婚したオーストリア人の彼がジャガー(XK)に乗っていたんだけれど……、友達と遊びに行くにも買い物に行くにも落ち着かないから、前から好きだったミニ(クラシック)を買ってもらったの。すご〜く満足♪」■カトリーヌ・デロワ(23才・女性・主婦)
「プレミアムカーって眺めるのはいいけれど、ほしいとか乗りたいとかは思わないなあ……なんかガソリンとか気にしてしまいそうだし(笑)」■アレクサンドル・デシャン(36才・男性・薬剤師)
「部品も安いし、お買い得だし、ベーシックなクルマってやっぱり魅力的ですよ!」■ヨハン・ウィリアムズ(27才・男性・整備士)
「この前、高いクルマを持っている知り合いとドライブに行ったとき、車内で物を食べないでって言われたの……サイテーでしょっ! その点、わたしの206は気ラクに乗れていいわ。よくぶつけちゃうし、洗車もしていないけれど(笑)」■クロエ・ラヴィーニュ(28才・女性・美容師)
「ベーシックモデル、またベーシックグレードでは、それぞれのブランド・アイデンティティが明確に表現されていることが多いのでとても面白いですね。どれもシンプルですが、個性的です。」■ニコラ・ルクレール(36才・男性・薬剤師)
「オシャレしないと乗れないクルマはダメ!」■ポリーヌ・フェロン(35才・女性・会計士)
ただ安いから乗っているのではない、と言わんばかりのコメントの数々。日本のようにピカピカにして乗っているというオーナーは皆無だけど、それぞれの愛車に対する思いが伝わってくるようです。移動手段としての役割に対する期待は大きいが、けっして「単なる道具」で終わるものではない……。いずれにしても、「トップグレードやフル装備はお金持ちのもの」との認識が強く、それこそモナコにでも行かないかぎり、高級車が路上を占拠するなどという、日本の都市部での光景に出会うことはまずないでしょう。