いちばん高いのを持ってこい!そうしたお大尽のような買い方で3シリーズを選ぶと、あなたの元には335iがやってくることになる。
306馬力/40・8mを生む3L直噴ツインターボを心臓とする335iは、0→100km/hをたったの5.8秒で駆け抜け、楽々と250km/hリミッターを作動させる超性能の持ち主。アクティブステアリングも標準で、E90・3シリーズの先進性や高性能を味わい尽くすには、まさにもってこいの存在だ。
でも、ボリューム感や豪華なトッピングでおいしさを演出するファミリーレストランの料理と、クルマ界における3シリーズの存在はまるで異質。あり余るパワーや、最先端のハイテクをはぎ取ったとしても、中身がスカスカのクルマになったりはしない。極上素材のよさを生かすシンプルな料理に舌鼓を打つのと同様に、ベーシックグレードで味わうと、3シリーズの本質の旨味がより鮮明に感じ取れることも多いのだ。
そこで注目するのは320i。「BMWはストレート6にかぎる」と信じて疑わないファンにとっては、心臓が4気筒という時点で対象外かも。だが、クルマをトータルで考えれば、4気筒には大きな優位点があることも忘れてはいけない。いうまでもなく、それはノーズの軽さだ。
E90のエンジン回転数感応式パワステは、低速域から重めの操舵力設定。そのため日常の運転では実感しにくいが、峠道などに連れ出してみれば、6気筒モデルと比べて320iがさらに素直な回頭性と、より軽やかなフットワークを備えることがわかるはず。NA6気筒搭載車と比べても、前輪にかかる荷重が50kgほども軽いのだから当然と言える。
エンジン性能がものを言う上りステージは話が別だが、下りとなったら「駆け抜ける歓びで320iの右に出るセダンはない」と言っても過言ではないだろう。また車重の軽さは「曲がる」、「止まる」の性能にも余裕を生み、標準の205/55R16タイヤでも十分にスポーティな走りが楽しめるのも見逃せないところ。操縦安定性と乗り心地の快適性のバランスから見ても、320iは秀逸な才能を持っているということだ。
さらに、性能が過剰でない2L直4バルブトロニックには、めいっぱい回して使い切る楽しみがある。さすがにBMWの6気筒にはかなわないが、N46B20Bユニットの回転の滑らかさ、サウンドの心地よさ、高回転の吹けの上質さは、そんじょそこらの6気筒には負けないレベル。MTはもちろん、6速ATでもステップトロニックを駆使すれば、その旨味を日常的に味わうことが可能だ。08年春の改良では、パワースペックを150馬力 /6200rpmから156馬力/6400rpmに変更して、一段と高回転域の爽快感を強化した。
加えて、ポプラウッドトリム、マルチファンクションステアリング、ETC付きルームミラーなどの32万円相当の装備をプラスして、価格上昇は5万円ほどなのだから、お値打ち感はさらに向上!3シリーズのベストバイは320iと言って、異論を挟む人はいないはずだ。